不動産に関する相続税対策
相続税が増税されたことによって、これまでは相続税とは無縁だった人が課税対象者になることもあり、相続税の節税対策が注目を集めています。相続税対策としては「不動産が効果的」という情報もありますが、その具体的な仕組みや方法を知っておかなければ失敗するリスクも増えるため、仕組みを理解して自分に適した不動産に関する相続税対策を選択することが大切です。
目次
不動産を活用した相続税対策の仕組みとは
不動産が相続税対策になる理由は、建物や土地に関する評価額が現金の評価額よりも低く評価されるからです。
例えば、現金や有価証券の評価額は“時価”で評価されるのに対し、不動産である建物と土地の場合は時価ではなく“固定資産台帳または路線価”などから算出した評価が課税対象とされています。
そのため、不動産は他の資産に比べて相続税を低く抑えられる傾向があるので節税対策に効果的だといわれています。
不動産の相続税評価について
上記では不動産が相続税対策に効果的な理由について解説していきました。
では、次に実際の不動産の相続税評価について解説していきます。評価額に関しては建物と土地で評価方法が異なるため、正しい評価方法を覚えるようにしましょう。
建物の評価額
一般的に建物の評価額は、固定資産課税台帳に記載されている固定資産税評価額に基づいて算出します。相場としては、建築費用の60%前後の価格で評価されることが多いです。
よって、建築費用が1,500万円の建物の場合、相続税評価額は1,500万円×60%=900万円ということになります。なお、固定資産税評価額については3年ごとに改定されるため、市役所から通知される最新のものを確認するようにしましょう。
土地の評価額
一般的に建物の評価額は、国税庁が定めた路線価に対して土地の面積を乗じることで算出します。路線価方式で評価された場合、地価公示価格の80%前後の価格で評価されます。
よって、路線価の評価が1,500万円の土地の場合、相続税評価額は1,500万円×80%=1,200万ということになります。
また、土地の評価については納税者保護の観点からいくつかの特例が存在しており、中でも高い節税圧縮効果を持つのが「小規模宅地等の特例」というものです。小規模宅地等の特例は、用途や面積などの設けられている条件を満たすことで、被相続人の住居であれば80%、第三者に貸し出している賃貸物件であれば50%の評価額が減額可能となるものです。
この特例を適用するための条件については以下のようなものがあります。
- 相続人が亡くなった人の配偶者、同居親族、賃貸アパートに住んでいる別居親族のどれかであること
- 適用範囲は宅地面積が330㎡まで
- 宅地用途に一定の制限アリ
不動産を活用した具体的な相続税対策の方法と効果
現金を不動産に換える
相続した遺産が現金のみであれば預貯金などの金額が相続税評価額となる一方で、不動産の相続税評価額については路線価(土地)や固定資産税評価額(建物)が適用されます。
一般的に路線価は時価の80%、固定資産税評価額は時価の60%前後とされていることから、相続した現金を不動産に変換するだけでも相続税評価額の圧縮が可能となり、節税につなげることができます。
土地を貸家建付地にする
路線価がそのまま評価額になる更地よりもアパートやマンションなどの賃貸物件が建っている土地(貸家建付地)は相続税評価額の減額対象とされています。
これは、自己使用の土地よりも第三者に貸し出している土地は所有者側からすれば土地の使用が制限されるためであり、自己使用目的よりも保護するためのものです。
相続時精算課税制度を利用する
相続時精算課税制度とは、所有不動産を子供に贈与した場合などの、生前に贈与された財産に対する税金が相続時に同時課税される制度です。
この制度は相続税以上の税金を払うことなく子孫に財産を贈与できるという点にメリットがあり、また相続税の課税は相続時ではなく“贈与時の時価”によって計算されることから、将来的に資産価値の上昇を見込める不動産の贈与であれば大きな節税対策だといえます。
所有不動産の売却
放置が続いている土地や低収益の不動産の場合、継続所有よりも売却するほうが節税効果を期待できることもあります。
現金化すると評価は時価扱いに変更するので相続税評価額自体は高くなってしまいますが、現金化することによって流動化が高まり生前贈与や納税準備金に回すことも可能です。
また、変動リスクが大きい不動産に偏らせるのではなく、リスク回避のためにも財産を預貯金や有価証券などに分散させておくのも良いでしょう。
まとめ
不動産は相続税対策への節税効果が大きいのと同時に、節税が失敗した際のリスクも備わっています。よって、不動産を活用した相続税対策の仕組みを理解し、実際に要する相続税額から適した対策法をピックアップして自分に合った相続税対策を行えるようにしましょう。
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