効率的な自宅の売り方 住宅ローン完済前の売却が有利な例も
体力の衰える時期を迎えたとき、選択肢の一つが自宅を売却して老人ホームに入るというものだろう。無事に売却できればまとまったお金は手に入るのに加え、マイホームの売却益は通常、「3000万円の特別控除」(マイホームを売ったときの特例)が受けられる。
ただし、この特例は自宅に住まなくなってから3年後の年末までに売らないと適用されなという点に注意が必要だ。老人ホームに入居後、3年後の年末までに売った場合とそれ以降の場合、納税額に600万円以上の差が出ることもある。
それだけに、売却には入念な準備が求められる。介護アドバイザーの横井孝治氏はこう指摘する。
「自宅の売却には、不動産仲介業者を決めて販売活動をして、売却契約を締結して引き渡しをするなどの時間がかかり同時に入居施設を探すとなれば、75歳での施設入居をめざす場合、遅くともその2年前には準備を始めるべきです」
老人ホーム入居と病気による長期入院は「自宅を空にする」のは同じでも、売却についての判断は変わってくる。
前述の3000万円の特別控除は「3年以上の長期入院になっても、病院に移り住んだわけではないので適用が受けられることがほとんど」(ファイナンシャル・プランナーの益山真一氏)なので、焦って売却しなくてもよい。
「住宅ローン」は完済してから売ったほうがいいのか?
定年後も住宅ローンが残っているケースは少なくない。ただ、前出・横井氏は、自宅の「売り時」を考える上では必ずしもローン完済を待つ必要はないとする。
「資産価値は時間が経つほど価値が下がるので、たとえ住宅ローンが残っていても自宅を売却して、有料老人ホームより割安な施設が多いサービス付き高齢者向け住宅に移るという考え方もあります」(横井氏)
ただし、売るにあたっては「ローン残高と自宅の資産価値の比較検討が必要になる」と横井氏はいう。
「例えば20年前に3000万円で買った物件のローン残高が60歳で1000万円の時に売ることを考えた場合、そこで物件の価値を調べます。価値が1000万円だったならばローンは相殺、1500万円だったら抵当権を解消しても500万円が残る。ここまで整理できたところで、貯蓄なども踏まえて次の住まいを探し、家賃の折り合いがつくようなら自宅を手放す手続きに入るわけです」
人生最大の資産である我が家を「効率的に捨てる」ことができれば、定年後の暮らしはより安定する。
(*※週刊ポスト2018年3月2日号)