不動産鑑定士による鑑定評価はどのように決定されているのか
不動産を売却する際に、対象不動産の価格を求めることになります。一般的には不動産会社による査定評価を受けることになりますが、不動産鑑定士がより正確に価格を導き出す「鑑定評価」という基準があります。
今回は、不動産鑑定士による鑑定評価がどのように求められているのかについて詳しく解説していきます。
目次
不動産鑑定とは
不動産鑑定とは、不動産鑑定士が地域分析や個別分析などを行い、その不動産に最も適用した鑑定評価で鑑定した内容に対して専門家としての判断を加味し、不動産鑑定評価額を決定することをいいます。
不動産鑑定評価を行う際には、「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」の3手法を使って求めることになります。それぞれの手法は計算方法が大きく異なり、どの手法を選択するかは対象不動産の要因によって決まります。
原価法
原価法は不動産鑑定評価における定番手法で、再調達原価をベースに減価修正を行って評価額を求める手法です。この評価額を「積算価格」といい、計算式は次のようになります。
再調達原価は、対象不動産を再調達(再建築)することを想定した場合に必要な「原価」のことを指します。具体的には、建物の場合は建築費など、土地の場合は取得原価や造成費などが該当することになります。
そして、減価修正となる要因は「物理的要因(老朽化など)」「機能的要因(設備の陳腐化など)」「経済的要因(近隣地域の衰退など)」があり、この3要因を合わせて減価額を求めます。
また、減価修正には3要因以外にも「耐用年数に基づく方法」と「観察原価法」を併用して計算することになります。
耐用年数に基づく方法について
不動産は構造ごとに応じて耐用年数が定められており、耐用年数には「法的耐用年数」と「経済的耐用年数」の2種類があります。法的耐用年数は耐用年数によって減価償却費が変わるため、次のような年数が決められています。
- SRC造、RC造…47年
- 木造…22年
- 重量鉄骨…34年
観察原価法
観察原価法は、不動産の維持管理状態、設計・設備などの機能性、近隣環境との適合の状態など、減価修正となる要因を現地に出向き「実態調査」することによって減価額を求める方法です。
取引事例比較法
取引事例比較法は、近隣不動産の過去の取引事例を基に不動産価格を算出する方法で、主に私たちエンドユーザー、一般消費者が取引する”住宅の売買”において活用する算出方法となっています。
評価方法としては、複数の取引事例の「収集」「選択」を行い、そこから取引価格を事情補正・時点修正することになります。そして、さらに地域要因・個別的要因を比較して評価額を求めます。
事情補正について
適正な価格で取引されたものに限定する必要があるため、自己破産で安く売却された(売り急ぎ)や競売市場で取引された(買い急ぎ)などの、いわゆる「投機目的」の事情は排除して補正されます。
時点修正について
不動産市場は常に変動していることから、選択した事例が取引された時点(時期)と対象不動産の評価を行う時点が異なることになります。そういった場合には、変動に考慮して時点修正が行われます。
地域要因について
取引事例が近隣地域ではない場合、地域による格差を比較して適正なのかを確認する必要性があります。具体的には、「街路条件(街路の幅員など)」「交通接近条件(都心との距離など)」「環境条件(騒音・大気汚染など)」「行政的条件(行政上の規制など)」などの要因を考慮することになります。
個別的要因について
地域要因とは関係なく、その不動産に個別的に生じる要因についても考慮する必要があり、これを「個別的要因」といいます。具体的には、次のような要因が挙げられます。
- 接道の有無
- 日照
- 土地の形状、広さ
- 地盤の強度
収益還元法
収益還元法は、主に賃貸マンションなどの収益物件を売買する際に使用される評価方式であり、反対に居住用不動産の評価には向いていない評価方式です。
また、簡易的な計算で求める「直接還元法」と現在価格を割引いてより正確に求める「DCF法」の2種類に分かれます。
直接還元法について
直接還元法とは、一期間(通常は一年間)における純収益を還元利回りで除することにより、収益価格を求める方法です。
一期間の純収益は、投資物件から得られる家賃収入などに対して、管理費(公租公課など)の諸経費を差し引くことで求めることができます。
従って、仮に物件情報を「家賃15万円/月・諸経費30万円/年・還元利回り5%」として、収益価格を求めると以下のようになります。
- 15万円×12ヵ月-30万円=150万円(純収益)
- 150万円÷5%=3,000万円(収益価格)
DCF法について
DCF法は、将来得られるであろう毎月の利益と売却時の価格(復帰価格)を現在価格に割引し、これらを合計して評価額を計算します。直接還元法より精度の高い評価手法となっていますが、計算式はかなり複雑なものになっています。
DCF法の考え方としては、まず収益物件の所有期間を10年と想定し、その物件の年間純収益を100万円と仮定。しかし、所有期間10年の間には空室、家賃下落などのリスクによって確定的に10年間とも毎年100万円の収益が得られるとは限りません。
従って、不確定要素の強い将来よりも現在の100万円が「価値のあるもの」ということになるため、現在の価値100万円×10年間=500万円に対して、「将来の価値」を含む割引計算を行うことになります。これが、DCF法の一連の流れです。
まとめ
このように不動産の鑑定評価は複雑な計算式で行われ、難易度の高い国家試験に合格した不動産鑑定士のみが評価することを許されています。
不動産鑑定士に依頼すると費用はかかるものの、その分不動産会社による簡易的な査定よりも精度の高い評価になるので「適正な価格で不動産を売却したい」と希望する場合は検討してみてください。
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