【メーカーレポ】富士山の水と60年向き合ってきた「ふじざくら命水」ヒストリー
ウォーターサーバーの水として人気が高い「富士山の水」。大自然に恵まれ水質がいいため、多くのメーカーが富士山周辺の水を採用している。「ふじざくら命水」もその一つ。しかし他と一線を画すのは、富士山の水と長年かかわってきた歴史に裏打ちされた、水自体の信頼性の高さだという。
◆「命の水」誕生ストーリー
「ふじざくら命水」のサービスが開始されたのは、2013年。ウォーターサーバーとしては比較的新しい。しかし、富士山の水との出合い自体は今から60年前にさかのぼる。「富士桜命水株式会社」の母体は富士山麓で長年、レジャー施設や不動産業などを運営してきた「富士観光開発」だ。同社営業部課長の小佐野晋輔さんは、こう話す。
「富士山のお膝元でレジャーを展開しようと創業者は考えたわけですが、富士山というのは『川のない山』なんです。河口湖も生活用水の水源にはならず、溶岩台地という浸み込みやすい地質のため、すぐに地中深くに入っていってしまうんです。そのため富士山の北側の地域は水不足に悩まされてきました」(小佐野さん、以下「」内は同)
富士山全域では年間で20億トン以上の水が、雨や雪として供給されることが観測されている。これだけの水があってもほとんど地下水となってしまい、目の前で直接採取することができない。そこで、まずは井戸を掘って水源を探すところから始まったという。
「富士山周辺は、玄武岩という溶岩が地表で急速に冷え固まった岩石の層が重なっているので、10メートルや20メートルでは水は出てきません。2年かけて水脈を見つけることができました。そうして水を確保することができたので、別荘地やゴルフ場などに水を供給するめどが立ったのです。この水は富士山という巨大なろ過装置を通して長い年月をかけて生成されているので、非常にキレイでミネラルをバランスよく含んでいることもわかりました」
人々が暮らすうえで、水はもっとも基本となるものだ。いい水を得たことで観光客も呼べるようになり、町が発展していった。まさに「命の水」といったところだろう。
「ふじざくら命水」の故郷は、河口湖に近い山の中
◆半世紀にわたって供給してきた実績
同社の井戸からくみ上げられる水は、pH8.03の弱アルカリ性で、硬度は31ミリグラム。硬度とは水の性質を表す指標の一つで、水1リットルに含まれるマグネシウムとカルシウムの量によって決まる。WHO(世界保健機関)では120ミリグラムを境に、それより多いほうが硬水、少ないほうを軟水としている。硬度が高いと、ミネラル独特の味が強くなることが知られている。
「硬度が31ミリグラム程度の水は味わいが柔らかく、すっきり飲みやすいと評価されます。赤ちゃんやペットには、硬度が高い水は避けたほうがいいと言われており、おいしくて安心な水質と考えています。また『バナジウム』という、人間に有用なミネラルが富士山系の水には多く含まれています」
ちなみに東京の水道水の硬度は50~60ミリグラム前後なので、それよりも低い。
「富士山からの良質な水の恵みのおかげで、多くの方にレジャーを楽しんでいただけるようになりました。これをもっと多くの人に届けたいと考えて、1998年に『富士桜高原麦酒』という地ビールを発売しました。ビールは水の質に左右されます。ドイツの本格的な機器を使って作ったこのビールはベストセラーとなって、世界的なビールコンテストで1位を取ったほか、いくつもの賞もいただきました」
このビールは県外へも出荷され、多くのファンを作った。そうしているうちに、一般ユーザーから「富士山のおいしい水を飲んでみたい」という声が聞かれるようになっていったという。
「ふじざくら命水」のサーバーは2種類。左が新型のサーバーで、箱の中の水バッグを上部のケースに入れて使用する。また、サーバーがあまり使われない時間を記憶して、クリーニングを行う賢い機能も搭載された
「最初は富士山の水だけを売ることは考えていませんでした。でも、より多くの方に喜んでもらえるならと、ウォーターサーバーとして提供することを決めました。富士山の水はさまざまな会社から発売されていますが、私たちの水で自信を持って言える点は『半世紀にわたって、一度の事故もなく広く使われてきたこと』です」
水をくみ上げることは機材さえあれば可能だ。しかし長い年月にわたり、富士山麓で暮らしたり訪れたりした多くの人たちが、何の問題もなく利用してきた信頼と実績、これは到底、まねできるものではない。
そんな「ふじざくら命水」は、ウォーターサーバーとしての機能やサービスも充実させて提供されている。
「富士山の水を使い勝手よく楽しんでいただくために、弊社ならではの工夫をしています。その一つがボトルを『バッグ・イン・ボックス』形式にしたことです。これは段ボールの箱の中に水の袋が入っていて、箱の外に出ているコックをサーバー本体とつないで使います。袋は密閉されていて水が少なくなるとつぶれていき、外気が入らないため、衛生的であることもメリットです」
箱も袋も、回収が必要ない使い切りの『ワンウェイ方式』。そしてバッグ自体にコックが付いているため、電源がなくてもバッグから直接水を出すことができる。つまり、ボックス単体で使うこともできるので、場所を選ばず使えるだけでなく災害時の備蓄水としても有効だ。
「サーバー本体は国産なので日本人に使いやすく、メンテナンス面でも安心です。また、冷水タンクの中を7日周期で85度のお湯を循環させて、自動的にクリーンにする機能をつけています。さらに、温水も冷水も2段階の温度調節ができるため、熱すぎたり冷たすぎたりしたとき、ボタン一つでサッと切り替えができます」
良質な水を多くの人にリーズナブルに使ってもらうためのキャンペーンも豊富だ。ファミリー層に向けた長期割引プランである「ママ応援プラン」は、お子さんの年齢が15歳までを対象としている。この種のプランの中では比較的年齢層の幅が広い。
「1か月無料の『お試し』もあるのですが、ここから継続して使い始める方も多くいらっしゃいます。今年は10月まで、毎月1名の方に『1年間水とサーバー代が無料』という、ご契約者全員にチャンスがあるキャンペーンを行っています。この機会に多くの方に、富士山の水のよさを知っていただきたいですね」
富士山の水を知りつくしたメーカーが提供する「ふじざくら命水」。次回は、実際どのように作られているのか、その現場レポートをお届けしたい。
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