ウォーターサーバーの採水地に富士山系が多い理由を調査してみた!
ウォーターサーバーに使われている水の多くは、地下からくみ上げた天然水。いずれもおいしさと安全性のために、採水地の選定にこだわっている。特に人気があるのが富士山周辺からの水で、採水工場も多く存在している。そこで今回は、富士山系の水の状況について調べてみた。
◆ミネラルウォーター生産量が多いのは?
国内のミネラルウォーターの現況について、詳しく統計を取っているのが「日本ミネラルウォーター協会」。同協会が調べているデータの一つに、ミネラルウォーターの「都道府県別生産数量の推移」がある。これを見ると、山梨県と静岡県が2トップ。いずれも富士山系に隣接する県だ。
特に山梨県の生産量は年々増え続けており、2013年には99万8191キロリットルだったのが、2017年には142万7005キロリットルにまで増加。全国から見た割合も34.8%から43.8%になっている。
2番手は静岡県。2017年は54万9302キロリットルの生産量で、割合は16.9%となっている。ちなみに3番手は鳥取県。2017年のデータでは、34万4151キロリットルで、割合は10.6%。これは良質の水をもたらす山である、大山があるから。サントリーやコカ・コーラウエストといった、ミネラルウォーターの有名メーカーが採水地として集まっているという点も大きいだろう。
富士山系は日本有数の採水地
ウォーターサーバーに目を向けてみる。山梨県の採水地からの水を使っているのは、「プレミアムウォーター」、「フレシャス富士」、「サントリー南アルプスの天然水」、「富士桜命水」、「マーキュロップ」、「シンプルウォーター」など。
一方、静岡県産では、「フレシャス朝霧高原」、「コスモウォーター(東海以北の配送エリア用)」、「うるのん」、「キララ」、「ネイフィールウォーター 富士の希」、「富士天空水」などがある。
◆富士山は「水の山」?
これだけ採水地が集まる理由は、富士山が「日本一の山である」といった単純なブランド力の問題ではなく、富士山が良い水を作り出す山であることが大きいようだ。
富士山周辺には自然湧水が多く点在している。有名なのが柿田川湧水、白糸ノ滝、忍野八海など。また、富士登山者がよく訪れる浅間大社の池もそうだ。富士五湖も湖底からの湧水で成り立っている。
こうした水は、どこから来るのだろうか? 国土交通省中部地方整備局がまとめた「富士山豆知識」によると、富士山には常に水が流れている川がない。そのため、雨や雪解け水は地下に浸み込んでいき、それが末端で湧水として出てくるという。言われてみれば、普通の山は沢があったり小川があったりする。しかし富士山には、水が流れる谷はあっても、いわゆる川があるイメージがない。
富士山は度重なる噴火で、溶岩の層がいくつも重なっている。溶岩の特性として、表面と底の部分は早く冷えて砕けるが、ゆっくり固まる中心部分は密度が高くなるので、水は通らないという。富士山に降った雨や雪は、砕けて水を通しやすくなった溶岩の部分を通って、ふもとの湧水地から出てくることになるようだ。有名な白糸ノ滝が、岩の割れ目から水が流れ落ちているのも、これが理由だ。
富士山系は日本有数の採水地
この地中の層が富士山の水の一大特長になってくる。「フレシャス」によると、水は採水環境によって、性質が大きく変わるという。富士山の水には「バナジウム」というミネラルが豊富に含まれており、これは国内では珍しい。富士山の地質が、通常のマグネシウムやカルシウム以外にバナジウムまで含ませることで、独自のおいしさを作り出していると考えてよさそうだ。
さて、ここで心配になってくるのが「そんなにみんなして水をくみ上げて大丈夫なのか?」という点だ。雨も雪も必ず降るものだが、湧水や地下水となるのは何年も経ってからだ。
この点についても、同局で出した試算がある。富士山の年間降水量は、蒸発分を考えても25億立方メートル。これが富士山に浸み込んだり流れたりして、地下水となっていく。そして算出された富士山全体の1日の湧水量は、534万立方メートル。同局では1人1日400リットルの水を使っても、1日あたり1335万人分の水がまかなえると計算している。生活用水として風呂に入っても1日でそんなには使わないだろうから、かなり贅沢に使っても、東京都の人口くらいカバーできてしまうということだ。
1日あたり534万立方メートルの水が、富士山の地下には10~15年分もあると考えられている。なんだか気が遠くなるような数字だが、富士山の偉大さがわかろうというもの。すぐに枯れてしまうことはなさそうなので、ひとまず安心。
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おいしくて安全、日常何げなく飲んでいるウォーターサーバーの水だが、由来を調べてみると、その水が選ばれた理由がよく見えてくる。富士山周辺には観光スポットも多いので、いずれ訪れる人もいるだろう。そのときは、雄大な山を眺めながら「いつもの水は溶岩のすき間を通って、あの大きな山の中に蓄えられているのか!」と、思いをはせてみてはいかがだろうか。