「清涼飲料水」と「ミネラルウォーター」は何が違う?
コンビニやスーパーマーケットに行くと、たくさんの種類が売られているミネラルウォーター。『サントリー天然水』や『い・ろ・は・す』、『ボルヴィック』、『エビアン』…など、数多くの銘柄があるが、「ミネラルウォーター」として認識される商品として、共通しているのは、“味がない”ということだろう。
その一方で、製品によっては、味がついているものがあるパターンも少なくない。
たとえば、『い・ろ・は・す』シリーズであれば、『い・ろ・は・す みかん』、『い・ろ・は・す りんご』、『い・ろ・は・す もも』といったフルーツの味がする製品が販売されており、ほかにも炭酸が含まれた『い・ろ・は・す スパークリングれもん』、『い・ろ・は・す サイダー』がラインナップされている。
さらに、11月28日からは『い・ろ・は・す なし』が販売されるほか、10月にはファミリーマート、サンクス、サークルK限定の『い・ろ・は・す マンゴー』も発売された。
※画像:『い・ろ・は・す』には様々なフレーバーウォーターも(公式HPより)
これら“味のある”ミネラルウォーターは、厳密にいうと、「ミネラルウォーター」ではなく、「清涼飲料水」と呼ばれるものだ。
「清涼飲料水」というと、いわゆるジュースや、スポーツドリンクをイメージする人も多いだろうが、一体「清涼飲料水」とはどんなものなのだろうか。そして、「ミネラルウォーター」とはどんな違いがあるのだろう?
乳製品やアルコール以外は「清涼飲料水」
食品衛生法によると、乳製品やアルコール飲料以外のすべての飲み物を「清涼飲料水」と呼ぶという。
つまり、コーラやジンジャーエールなどの炭酸飲料、果汁が含まれたジュース、紅茶やウーロンや緑茶、スポーツドリンクはもちろん、トマトジュースや豆乳、缶に入って売られているコーンポタージュなども、「清涼飲料水」ということになる。
そして、実は、味のない「ミネラルウォーター」も清涼飲料水に含まれるのだが、一般に販売されているミネラルウォーターのラベルを見ると、「種類」あるいは「名称」という欄には「清涼飲料水」ではなく、「ナチュラルウォーター」や「ナチュラルミネラルウォーター」と書かれていることが多い。
一方で、たとえば『い・ろ・は・す みかん』のような、味のあるミネラルウォーターであれば「種類:清涼飲料水」とラベルに表記されているのだ。
どうして「ミネラルウォーター」と「清涼飲料水」という表記の違いが出るのか。それは、日本ではミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインというものが存在しているからだ。
「清涼飲料水」と「ミネラルウォーター」の違い
農林水産省が定めたこのガイドラインでは、飲料に適した地下水などを容器に詰めた製品のうち、水のみが原材料となっているものを「ミネラルウォーター類」と呼んでいる。
そして、仮に同じ地下水を原材料としていても、そこに果汁や甘味料などが加えられていると、「ミネラルウォーター類」と呼ぶことはできず、「清涼飲料水」と表示しなくてはならないというわけだ。
つまり、「ミネラルウォーター類」と「清涼飲料水」の違いは、水のみを原材料にしているかどうか、ということ。水以外の何かが加えられていたら、「ミネラルウォーター」と呼ぶことはできないのだ。
「ミネラルウォーター類」も農水省のガイドラインで、細かく分類される。「ナチュラルウォーター」は、地下水を原水として、沈殿、濾過、加熱殺菌以外の処理を行っていないもの。「ナチュラルミネラルウォーター」は、「ナチュラルウォーター」のうち、鉱化された地下水(鉱水)を原水とするもの。
つまり、比較的ミネラルを多く含むナチュラルウォーターということになる。そして、「ミネラルウォーター」は、「ナチュラルミネラルウォーター」を原水として、ミネラルの調整や複数の原水のブレンドなどがほどこされたものだ。
上記の3つに当てはまらない「ミネラルウォーター類」は、「飲料水」や「ボトルドウォーター」と表記される。たとえば、水道水をペットボトルに入れて販売されているものがあるが、これが「飲料水」、もしくは「ボトルドウォーター」ということになる。
また、タンクを宅配してくれるウォーターサーバーの場合には、各地の名水をボトリングした「天然水」と水源で採取した水をRO膜で濾過した「RO水」がある。「RO水」の場合は人工的にミネラル分をプラスしているケースも多い。
参照:ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン|農林水産省
味つきの水はミネラルウォーターではない!?
参考までに『い・ろ・は・す』の場合は、「原材料名:水(鉱水)」とのみ明記されており、その種類は「ナチュラルミネラルウォーター」となる。
一方の、“味がある”『い・ろ・は・す りんご』の場合、原材料の欄には「ナチュラルミネラルウォーター、糖類(果糖、砂糖)、塩化Na、リンゴエキス、酸味料、香料、塩化K、乳酸Ca、酸化防止剤(ビタミンC)」と書かれており、水以外の成分が多数加えられていることがわかる。その結果、種類は「清涼飲料水」となるのだ。
ちなみに、『い・ろ・は・す サイダー』の場合は、「ナチュラルミネラルウォーター、糖類(果糖、砂糖)、リンゴエキス、酸味料、香料、酸化防止剤(ビタミンC)」が原材料となり、種類は「炭酸飲料」となっている。こうした、炭酸が含まれた清涼飲料水は、「炭酸飲料」と呼ぶ。
まとめると、水のみを原材料とするものを「ミネラルウォーター類」と呼び、その製法によって、さらに「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」「ミネラルウォーター」に分類される。
一方、「清涼飲料水」とは、乳製品とアルコール飲料以外の飲み物、ということになる。
つまり、“味がある”ミネラルウォーターは、あくまでも“水”ではないということ。また、ナチュラルウォーターは基本的にノンカロリーだは、“味がある”ミネラルウォーターには糖類が含まれていることも多く、多少のカロリーがあることも忘れてはならない。
味のない水は物足りないから、味がついているフレーバーウォーターを飲む──そんな人もいるだろう。しかし、根本的にはまったく違う飲み物であるということは、頭の片隅においておくべきだろう。