豆腐の専門家に聞いた! おいしい水と豆腐の関係
夏場はサッパリしたものが、よりおいしく感じる。その一つが冷や奴だろう。ショウガやきざみネギ、おかかを乗せてサラッと食べられる。晩酌のお供にもいい。そんな普段何気なく食べている豆腐だが、実はおいしい水と切っても切れない関係にあるのはご存じだろうか? 今回は、日本豆腐協会専務理事の町田秀信さんに話を聞いた。
◆豆腐の味は水で決まる!
日常よく口にする絹ごしや木綿といった豆腐の場合、全体の8~9割が水である。ということは水の良し悪しがダイレクトに反映されることになる。町田さんに製造過程から説明してもらった。
「原料となる大豆は、まず水洗いされ、その後“浸漬”といって水につけられます。ここで豆に水をたっぷりと吸わせますので、水の質はとても重要です。その後、水を加えながら磨砕し加熱します。豆腐作りにはどれだけ多くの水が関係しているのかがおわかりいただけると思います」(町田さん、以下「」内は同)
では豆腐に使われる良質な水とは、どんな水なのだろう。
「当協会に所属している豆腐メーカーのほとんどは、井戸水を使っています。しかも深さ30メートル以上の深い井戸からくみ上げる、天然の地下水です。豆腐工場を作ってから井戸を掘ったというよりも、『いい水の出る場所に工場を作った』といった方が正しいかもしれません。その水を豆腐製造に関わるすべての工程に使っているのです。普通の水道水では残留塩素が影響したり、いわゆるカルキ臭がしたりするのでそのままでは使えません。水道水を利用しているメーカーでも、浄水施設を通すなどして使うことになりますね」
いい水のあるところに、おいしい豆腐はできる
昔から有名な豆腐の産地といえば京都だが、これも豆腐作りに適した良質の水が流れているからということだそうだ。しかし水がキレイであればいいわけではなく、水の成分も影響するとのこと。
「豆腐作りには軟水が適しているのです。軟水とは、1リットルの水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量が120ミリグラム以下の水をいいます。それより多いと硬水になります。大豆のタンパク質はカルシウムによって固まる性質があるため、硬水だと不必要に固い豆腐が出来上がってしまいますね。絹ごしでも、手でつかめるような固い豆腐になってしまうでしょう(笑い)」
◆凝固剤によって2種類の豆腐が…
豆腐作りでは大豆を煮た後、磨砕し、豆乳とおからに分離し、豆乳に凝固剤を入れる工程があるが、水の硬度が高いとそこで固い豆腐ができてしまうのだそう。日本の地下水は軟水がほとんどであるから、その心配はまずない。
「カルシウムは豆腐の凝固剤としても使われています。“硫酸カルシウム”というものです。“すまし粉”ともいわれます。みなさんもご存じだと思いますが、凝固剤として代表的なものとして“にがり”があります。にがりは塩化マグネシウムという成分で、はるか昔から豆腐製造に用いられてきました。ところが戦時中、塩化マグネシウムはジュラルミンの製造に使えるので、豆腐用として使えなくなってしまったのです。その代用品として硫酸カルシウムが使われるようになり、いまでは一般的な凝固剤になっています」
どちらの凝固剤でも豆腐は作れるわけだが、それぞれに特長があると町田さんは言う。塩化マグネシウム(にがり)を使った豆腐は、塩分のおかげで甘みとコクのあるものになり、硫酸カルシウムを使った場合は、あっさりした味で、見かけは透明感のある仕上がりになるとのこと。
「にがりを使った豆腐は味がしっかり出るので、冷や奴など豆腐そのものを楽しみたいときに向いているかもしれません。一方、すまし粉を使った豆腐は薄味なので、湯豆腐のようにタレにつけるものや味噌汁に合いますね。湯豆腐でよく食べる京都の豆腐は、すまし粉を使ったものが多くなっています。透明感がありますから、湯に沈んだところが美しく見える効果もあるでしょう」
豆腐は夏にぴったりのタンパク質補給食品
◆ウォーターサーバーのおいしい水で自家製豆腐を
最近では自分で豆腐を作る人も増えてきている。ミキサーや電子レンジなどの家電を使うと簡単に作れるし、豆腐の材料がすべて入ったキットも市販されているからだ。
「ご自分で豆腐を作られる場合も、良い水を使われることをオススメします。軟水の天然水でもいいですし、水道水を使うなら浄水器を付けるなど。それだけで豆腐のおいしさが違ってきます。豆腐は数ある食品の中でも、水の影響が特に顕著に出るものの一つですから」
ウォーターサーバーの水も軟水を供給しているところが多い。特に水を大量に使う豆腐作りでは、威力を発揮しそうだ。
豆腐の専門家である町田さんに、夏のオススメの食べ方も教えてもらった。
「アボカドを厚さ1センチ弱、絹ごし豆腐も1センチ程度にスライスして、重ねて食べるのです。ゴマドレッシングやポン酢などで味付けするといいでしょう。最近では非常に低価格の豆腐も出回っていますが、製造工程で豆乳の濃度を低くしていたりして味がほとんどしないものがあります。せっかくですから、おいしい豆腐を見つけてほしいと思います」
日本豆腐協会公式サイト
http://www.tofu-as.com/