日本でいちばん雨が少ない!? 「晴れの国」岡山県の水事情について調べてみた件
マスカットやピオーネなど特産品のブドウや昔話の「桃太郎」が有名な岡山県だが、「晴れの国」とも言われているのをご存じだろうか。これは、県庁所在地での降水量が1ミリ未満の日が全国で最も多いことから来ている。訪れた際に雨にたたられる心配が少ないため、これをキーワードに観光客の誘致にも積極的だ。しかし雨が少ないとなると、水に困ることもあるのでは…?という疑問もわいてくる。今回は、そんな岡山県の水事情を探ってみたい。
◆雨は少なくても水源は豊富
岡山県がどれだけ晴天に恵まれているかをよく表しているのが、ある独自の制度だ。それは「映画やドラマのロケが雨天延期になった場合、一定額の補償金を出す」というもの。撮影に困るような雨はそうそう降ることはないという、自信の表れとも受け取れる。同県ではこの制度を利用して、県内でどんどんロケを行ってほしいというアピールを盛んに行っている。水島臨海工業地域のような近代的な施設もあれば、城跡や農村、古い町並みも随所に残っており、SFから時代劇までいろいろな背景に対応できる環境である点も、映画やドラマ製作のロケ地に向いているようだ。
さらに同県は「ハレウッド(ハリウッドと晴れの国をかけた造語)」を謳い、新作映画の製作を発表した。人気上昇中の俳優、岡山天音さんを主演に据え、若手監督のメガホンで岡山の魅力をふんだんに詰め込んだ映画を目指しているという。
「ハレウッド」特設サイト「ハレウッド」の出演者募集も(募集期間は2019年7月7日まで)。左から伊原木隆太岡山県知事、主演の岡山天音さん、前野朋哉監督
さて、“雨があまり降らない”という気象条件だけ見ると、水に恵まれていない土地柄なのではないか…と思ってしまうが、地理的に見ると岡山県全体が水郷ともいえるような構造になっていることがわかる。県内には吉井川、旭川、高梁川という一級河川が存在。川はそれぞれ県の東部、中央部、西部をカバーするような形で南北に走っている。源流は北部の中国山地にあり、ここは山陰と山陽の分水嶺のような地点だ。標高1200メートル級の山もあり、降った雨を豊富に蓄えられる自然環境も十分。同県河川課の資料によると、この3水系の流域面積は合計すると6000平方キロにもおよび、なんと県全体の80%の面積となるという。
また、環境省による「名水百選」では、昭和から平成にかけて「塩釜の冷泉」、「雄町の冷泉」、「岩井」、「夏日の極上水」の4つが選出されている。キレイなだけでなくミネラルバランスに優れていたり、パワースポットの水的な魅力があったりする地下水や伏流水のため、これらの水を求めて県内外から訪れる人も多い。
伊原木隆太岡山県知事に聞くと、同県の水についてこう語る。
「サラサラと流れる『岡山3大河川』は、清涼で柔らかい水を運んできます。水が優しいと人も優しくなるのでしょう。県外の人からは水の良さとともに、岡山県人は人柄がいいですねという話も多く耳にします」
◆豊かな水を活かした特産品
そんな岡山県では、日当たりの良さと良質な水が3つの川によって豊富に運ばれてくることによって、米作りが盛んだ。東京都港区新橋の「とっとり・おかやま新橋館」で話を聞くと、「ヒメノモチ」という銘柄のもち米で作ったもちがオススメという。関東圏では一般的ではないものの、瀬戸内地域ではメジャーな丸い形のもちだ。噛むほどに香ばしい米の味が広がり、食感もいいことからよく売れているとのこと。
「岡山県新庄村 ひめのもち」756円(税込み)
また、米と水がいいところには、いい酒ができるもの。岡山産の日本酒で人気のものを聞いてみると、蔵の町として知られる倉敷市にある熊屋酒造の「伊七 雄町特別純米酒」をオススメされた。同県で採れる「雄町米」という酒造に特化した米を100%使っており、日本酒好きの人からの評価が非常に高い一本だとか。
「伊七 雄町特別純米酒」1382円(税込み)
同県の各地でさまざまな銘柄の日本酒が作られているほか、甘酒作りも盛んなのだそう。昨今は発酵食品が注目を浴び甘酒ブームということもあって、米と糀と清らかな水から本格的な製法で作られた甘酒は、年代を問わず売れ筋商品となっているという。ちなみに、酒造用の米ではなく、炊飯用の同県産の米も300グラムの小袋から販売されている。
口当たりの良さやクリーンであること、ミネラルバランスに優れた水というと、ウォーターサーバーでは「フレシャス富士」「プレミアムウォーター」「コスモウォーター」「富士桜命水」に代表される富士山麓や、「アルピナウォーター」「フレシャス木曽」といった長野県が思い浮かぶ。また「日田天領水」や「プレミアムウォーター南阿蘇」のような九州中部の水も有名だ。
さらに名水の産地という点では、鳥取県の大山山系には、サントリーや日本コカ・コーラなどの大手企業が採水地を設けている。しかし、こうしていろいろ見てみると岡山県の水にも、がぜん興味がわいてくるのではないだろうか。
同県は2018年7月の「西日本豪雨」による、大規模な被害からの立て直しを図っている最中だ。岡山県の特産品を購入することは、復興の後押しにもなる。アンテナショップや通信販売を通じて、あなたも「食べて応援」を実践してみてはいかが?