名物は温泉だけじゃない!? 実は名水の産地でもある大分県の水にクローズアップ!
おいしい水の産地というと、富士山麓を思い浮かべる人が多いだろう。実際、富士山の水を使ったミネラルウォーターやドリンク類、ウォーターサーバーの水などは多くの会社から発売されている。しかし実際は、名水の産地は全国に点在している。大分県も実はその一つだ。今回は、なぜ大分の水がいいのか、そしてどんな成分があり、どのように使われているのかなどについて調べてみた。
◆江戸幕府の天領だった歴史ある水
九州各地には、良質の水がわく地域がいくつもある。環境省の「昭和の名水百選」では、福岡市の「不老水」や長崎県島原市の島原湧水群など4か所、「平成の名水百選」では、熊本市の「水前寺江津湖湧水群」や鹿児島県指宿市の「唐船峡京田湧水」など3か所。阿蘇山が作り出す天然水が自慢の熊本県は、最近特に水の良さをベースにした広報活動に積極的だ。
この他、九州の名水の産地としてチェックしておかなければならない地域がある。それが大分県。別府温泉で有名な同県は、水の地下資源が豊富だ。県で独自に、県内15か所に「豊の国名水」を設定しているほど。「豊の国」とは、はるか昔、現在の大分県を中心に存在した国のことで、県ではこれを愛称の一つとして使っている。
由布岳などの山々が名水を作り出す
豊の国名水のマップを見ると、名水スポットは同県内の各地に点在し、どこへ行ってもいい水に触れられることがわかるが、その中にミネラルウォーター好きの人にはなじみのある地名が出てくる。「御前岳湧水」のある日田市だ。
この日田市も、良質の水の産地として知られている。同市は内陸部にあり、阿蘇山にも近い。太古に阿蘇山が噴火したとき、火砕流による溶岩や火山灰などがたい積し、長い年月をかけてこのエリアの地層を形成した。それが天然のフィルターとなり、ミネラルバランスのいい湧水をもたらしているのだ。また、御前岳には原生林も多く残されており、これも水質の保全に貢献している。同市の周囲には阿蘇山の他、由布岳、久住連山、耶馬渓などがあり、盆地となっているので、地勢的に各山からの水に恵まれやすい環境といえる。
また同市には江戸時代からの街並みが残る地域があり、古くから作られた水路には、山からの清い水が流れ込み、これはやがて日本3大河川の一つである筑後川へと続いている。こうしたことから同市には「水郷」の愛称がある。水郷と呼ばれる水の里は全国各地にあるが、日田市の場合は「すいごう」ではなく「すいきょう」と読むのが特徴の一つだ。
ウォーターサーバーでも、この地にわく天然水に注目し、採水地を設けているメーカーがある。「日田天領水」と「ネイフィールウォーター」がそれだ。
「日田天領水」は、日田市中ノ島というところの原水井戸からくみ上げた水を、20年前から提供してきた。「松山-伊万里構造線」という大規模断層の上に位置する深い井戸からの水は、外界からの悪影響を受けないことがメリットだ。同社によると、名前の由来はこの地が幕末に徳川家直轄の天領であったことや、この水が「天から受領したもの」ということから来ているそうだが、クリーンでミネラルバランスに優れた水は、まさにその名の通りかもしれない。最近注目されている放射能についても定期的に検査を実施。問題のないことが報告されている。
この「日田天領水」は、ウォーターサーバー用としてだけではない。ペットボトル製品はもちろん、緑茶、ウーロン茶、化粧品などさまざまに応用されている。
◆9000年以上も昔の地下水
一方、「ネイフィールウォーター」ではユーザーが好みの水が選べるように、全国の3つの名水を用意している。富士山麓から採水した「富士の希」、京都の恵まれた自然が作り上げた「京ほのか」、そして日田市の地下からの天然水「日田ほのか」だ。
「日田ほのか」は日田市の中でも特に環境の良い地域の、地下750メートルが採水地点だ。同社が「日田ほのか」の年代測定を研究機関に行ってもらったところ、なんと9370年前の水ということが判明したという。この年代の古さは、世界的に見ても希少性が高いとのこと。地下水は長い年月をかけてできるというが、縄文時代の水を私たちが口にできるとは驚きである。これだけ太古の水となると、工場や放射性物質など人工のものによる汚染はまず考えられない。
日田市の地下深くには縄文時代の水が
この水のもう一つの特長は、含まれるミネラルの中に「有機ゲルマニウム」が存在すること。電機部品に使われるゲルマニウムとは別物で、漢方薬で使われるサルノコシカケや高麗人参などに含まれる水溶性の物質で、健康に対する効果の研究が進められている。その他、人体に必須なミネラルである亜鉛や、皮膚や骨などの形成に使われるシリカという微量元素も含有。日常の食生活が偏って、十分な量が摂れていない人にとってもありがたい水といえそうだ。
大分県は前述したように、別名「豊の国」。これは産業が豊か、温泉が豊か、人の心が豊かであるといったこともあるだろうが、「水が豊か」ともいえるかもしれない。日田市には地下水が出る公共の水飲み場もある。訪れたときは、ぜひ地元の水で喉を潤して、大分の大自然の恵みを実感してみてはいかがだろうか。