触って選べる専門店も登場!最新ウォーターサーバー事情
好みや目的に適った安全でおいしい水を、ペットボトルよりも手軽で割安、いつでも飲めるウォーターサーバーは、いまや一般家庭でも珍しくなくなった。メーカーや機種、宅配水の種類も増え、選択肢も多くなってきた。ただ、一般家電製品のように各種サーバーが並んでいる店舗はまだまだ少ない。こうした状況の中、2016年12月、静岡県浜松市にウォーターサーバー専門店がオープンした。そこで、企業の狙いとウォーターサーバー取り巻く環境などについて取材した。
◆「防災」から「こだわり」へ
ウォーターサーバーを店頭で何種類も扱っていて、実際に触って比較検討できるところは意外と少ない。首都圏の家電量販店やホームセンター、大型スーパーなどを見ても、ほぼ1社の扱いしかしていないか、多くても3社程度である。実際にウォーターサーバーを扱っている東京都内の家電量販店の売り場で聞いてみると、さまざまな事情があるようだ。
「店内に専用コーナーを簡単には作れなかったりといった理由もあります。実物を見て選びたいというお客さんも多いのですが、なかなかすぐには対応できないのが現状です」(家電量販店・売り場担当者)
このたび浜松市にできた店は、その名も「ウォーターサーバーの窓口」。6社のウォーターサーバーを扱っており、店員さんが対応してくれる。対面販売できるショップを開いた理由について、同店を運営するジュークジョイント代表の青山賢治さんはこう話す。
「ウォーターサーバーの代理店業務は、以前からやっていました。ショッピングモールなどでのイベント販売をおもに手掛けてきたのですが、ここ最近になってお客さんのニーズが多様化してきました。イベント販売では受託した1社の紹介しかできません。そこで、欲しい人がいろいろなウォーターサーバーを見て、選べるお店があったらいいだろうと思って開店したのです」(青山さん、以下「」内は同)
家庭用ウォーターサーバーの販売が、爆発的に伸びた時期がある。2011~2012年だ。東日本大震災により、防災対策での需要が高まったからだ。「日本宅配水&サーバー協会」の調査では、当時は成長率が前年比3割増の伸びが続いたことが報告されている。そんな「防災」への意識が一段落したところで出てきたのが、最近の「ユーザーのこだわり」だ。
「長く使っていると、使い勝手や使用目的、水の味など、もっと自分に合ったウォーターサーバーがあるのではと考え始めるお客さんが増えてきます。そういったみなさんの声を聞くと『タンクを上に載せるのは大変』とか『赤ちゃんのミルク用に適したものを』とか『デザインがおしゃれなものが欲しい』など、いろいろな要望があるのです」
ウォーターサーバーはいまや一家に一台の時代に?
すでに家庭に導入している人からも、多くの「買い替え需要」があると、青山さんは話す。意外とよく聞かれる意見が「買い替えたくても、どこで買ったらいいかわからない」、「イベント販売を見てきたが、説明を鵜呑みにして買っていいものか迷っている」というもの。リアル店舗では実機を触って比較でき、店員に質問もできるため、それから購入を決める人も少なくないとのこと。
◆今後は比較検討できる場が増える?
「浜松市エリアはウォーターサーバーの普及率が高い地域なんです。ガスでは静岡県内でトップシェアである『TOKAI』が、2007年から県内で初めて宅配水の事業を開始しました。ガスを利用している顧客をベースに営業したため、東海地区ではウォーターサーバーでも高いシェアを誇っています。だからこそ意識の高い人が多く、家庭に合ったものを選びたいと考えるようになったのでしょう」
震災直後のブームは落ち着いたとはいえ、ウォーターサーバー市場はここ最近も毎年100%以上の伸びが続いている。宅配水専門企業だけでなく、他業種から新規事業として参入してくる企業も増加中だ。ユーザーとしては、水質、機能、料金、サービス対応など選択の幅が広がるのはありがたいことだが、1~2社の製品しか見られないのではなく、しっかりと比較できる場が欲しいところだ。
浜松市にオープンした「ウォーターサーバーの窓口」店内
「お客さんからも企業様からも、面白いお店だと興味を持っていただき、双方の手ごたえを感じていますので、いずれは他地域への展開も行っていきたいと思っています」
こうした「ウォーターサーバーの窓口」のような多くの実機をそろえている実店舗だけでなく、インターネット情報サイトでも、複数のウォーターサーバーをそれぞれのユーザーが希望や目的に応じて比較検討しやすいことが重要となってくる。水にこだわりのあるユーザーは水の味だけでなく、デザインや機能、サービスなどに関しても目が肥えてきているのだ。
ウォーターサーバーは多くの家庭では一家に一台だが、最近はリーズナブルに導入できるコンパクトなものも多く出回ってきた。十分比較検討した上で、複数導入する「一部屋に一台」の時代も遠くないのかもしれない。