世界の水事情<アジア編> インドネシアでは家庭用ウォーターサーバーが一般的
東京水道局が「東京水」というペットボトルに入った水道水を商品として販売しているほど、日本の水道水は安心して飲めるが、世界にはまだまだ水道の設備が整っていない国が多い。記者自身も海外旅行に行くたび、水に関するカルチャーショックを受けてきた。そこで、今回は私の経験や海外に住んでいる友人の話などを元に世界の水事情を紹介していく。
◆韓国編──蛇口が2つ?
まずはお隣の韓国から紹介しよう。イメージでは日本とあまり変わらなさそうな水事情だが、詳しく話を聞いていくと、どうやらまったく同じとも限らないようで…。今回は広告関係に勤める30代の韓国人女性に話を聞いた。
「水道水を飲んでも問題ないと言われているけど、建物の配管の汚れや劣化による汚染が恐いから口はゆすぐけど、飲んではいないね。うちではウォーターサーバーは使ってないよ。私の家にはシンクの下に浄水器があって、飲み水専用の蛇口が取り付けられているから。ウォーターサーバーは昔は使っていたけどフィルターの交換に業者を呼ばなきゃいけないし、交換の費用も5万ウォン(約4700円)もするから、もう今は使ってない。新築のマンションや家には蛇口が2つ付いているところが多いよ。ちなみに水道代は2人暮らしで平均1か月、約1.5万~2万ウォン(約1400~1900円)ぐらいだね」
韓国では飲料用の浄水器の蛇口が併設されているのが一般的
「会社にウォーターサーバーはあるけど、大きいボトルを交換するタイプじゃなくて、水道水をサーバーにつなげるタイプ。デパートとか、フードコートにもあるよ。ちなみに水道水をサーバーに取り付けるタイプは叔父さんの家にもあったけど、子供が一人暮らしを始めて家を出たらやめていたよ。韓国ではサーバーの本体をレンタルする場合がほとんどだから、少人数には出費が大きいみたい。考えてみたら、ウォーターサーバーは4人以上の家庭に置いてあるイメージがあるね。ちなみにシンクに取り付ける蛇口の浄水器は冷水しか出ないけど、サーバーならお湯も冷水も出るし、水もキレイにしてくれるから一石三鳥だよね」
韓国では水に問題があるわけではなく、水が通る水道管に不安があるようなので、不純物などを取り除く浄水器タイプの方が人気のようだ。では、ウォーターサーバーや浄水器がない家では、飲み水はどうしているのだろうか?
「ペットボトルの水をまとめ買いしているよ。2リットルのペットボトルが6本で1万~1.5万ウォン(約930~1400円)前後で買えるし、セールの時を狙えばもっと安く買える。しかも、ネットで購入すれば、合計1万ウォン(約930円)以上なら送料無料で、近所のスーパーも一定の金額を超えれば家まで届けてくれるの」
日本でもオンラインショッピングでミネラルウォーターを購入するケースは年々増加している。女性やお年寄りの一人暮らし、車がない家庭などにとって、自宅まで重たい水を配達してくれるのは便利で嬉しいサービスだ。
◆香港編──水道水はケトルで沸かしてから飲む
日本から飛行機で5時間ほど、観光地としても有名な香港。日本と同じく先進国に入る香港の水道水は果たして安心して飲めるのか? 今回、医療関係に勤める30代の香港人女性に話を聞いた。
「水道水はそのまま飲めないわ。ケトルでお湯にしてから冷まして飲むの。気にする人はミネラルウォーターを買って飲んでいるけど、でもまだ水道水をお湯にして飲む人の方が香港では多いわね。沸かせば問題ないから、料理にも水道水を使うわ」
香港では水道水を電気ポットで沸かしてから使用
意外にも大都市にもかかわらず、水道水はそのまま飲むことはできないという。では水道代はどのくらいかかるのだろうか?
「水道水は2人家庭でだいたい1か月75香港ドル(約1000円)ほど。1年に4回支払うから、3か月に1回、水道水を払っているわ。ミネラルウォーターは、メーカーによるけど1本5香港ドル(約70円)ぐらいね。あと、日本と違ってお風呂につかる習慣はないから、シャワーのみ。部屋が狭いからバスタブがない家の方が多いの。だから、日本に行く時は絶対に温泉に入るわ」
家庭によるかもしれないが、香港の水道代は日本と比べるとかなり安い。この違いは、そのまま水道水を飲めないという点と、シャワーのみという水道代の差なのかもしれない。
「ウォーターサーバーは使っていたわ。でも、1か月に10リットル以上を絶対に買わなきゃいけない契約で、2人では飲みきれない大量な水だったから途中でキャンセルしたの。オフィスではウォーターサーバーを利用しているところは多いけど、一般家庭にはまだまだ普及してないわ」
毎月、水が入った大きいタンクが3つも届けられていたのだとか。使い切るのも大変そうだが、ストックの置き場所にも困りそうだ。
◆インドネシア編──トイレに紙が流せない!?
高層ビルが建ち並ぶインドネシア・ジャカルタの街並み
昨年、記者はインドネシアの首都であるジャカルタへ行った。インドネシアの水道水は飲めないということを知り、念のため歯を磨く時もミネラルウォーターで口をゆすいだが、現地の人は飲めない水道水をどのように使って暮らしているのだろうか? 今回は広告代理店に勤める30代女性のインドネシア人に話を聞いた。
「水道水は2人暮らしで1か月10万ルピア(約800円)ぐらいね。水道水を沸かしてお湯にすれば飲めるけど、私たちは飲まないわ。外出するときにはペットボトルのお水を持参するし、ほとんどの家庭ではウォーターサーバーを使っている。冷たい水も温かいお湯も両方とも使えるし、ペットボトルを何本も買うよりも、大きいボトルを一つ近所のスーパーで買えばいいから、家用としてウォーターサーバーは便利なの。金額はメーカーによるけど、サーバーの本体は1万円から5万円ぐらいのものまであるわ。ボトルに入った状態だと4リットルで3万6000ルピア(約300円)で、ボトルを持って行って水だけ入れてもらうと、1万6000ルピア(約130円)くらいかな」
インドネシアの家庭ではウォーターサーバーが一般的
香港と違い、インドネシアでは水道水を飲み水としてほとんど使用しないので、ウォーターサーバーが一般家庭に普及しているようだ。年中暑いインドネシアでは、冷たく安全な水を常に供給してくれるウォーターサーバーは必需品なのかもしれない。
「自宅のトイレやホテル、大きいデパートではトイレに紙を流せるけど、基本的には使い終わったトイレットペーパーはゴミ箱に捨てないといけないの」
そういえば私自身も、昨年インドネシアに行った際に、このトイレの問題に直面した。トイレの紙を流せないことは事前に聞いてはいたのだが、友人宅のトイレを借りた時に水が流れなかったのだ。慌てて友人に事情を説明すると、「ああ、ごめんね。水が溢れ出ちゃうから元栓を止めているの」と説明された。
友人が住んでいる地域は治安が良く、コンシェルジュもいるようなマンションだったが、上の階の水漏れのせいで壁にシミができていた。高層ビルが立ち並ぶジャカルタだが、まだまだ水の設備は整っていないようだ。
◆ベトナム編──トイレットペーパー論争勃発!?
フランスの植民地だったベトナム。西洋風な建物が今もなお多く残され、街中には高層ビルが並んでいるが、ベトナムの水事情はどのくらい進んでいるのだろうか? 今回はベトナム人女性と結婚し、ホーチミンに住む30代の日本人男性に水事情を聞いた。
「水道水を飲む時はお湯にしてから飲むよ。生水のまま飲むと、お腹をこわす可能性が高いからね。でも水道水で口はゆすぐし、野菜も洗う。海外から来た人や富裕層はミネラルウォーターを飲んでいるね」
現地の人が口をゆすぐのは問題ないようだが、ベトナムの水に慣れていない日本人が現地へ行った際は気をつけた方がよさそうだ。では、ベトナムではインドネシアと同じように家庭でウォーターサーバーを使っているのだろうか?
「ウォーターサーバーの機械は使っていないけど、大きいボトルに蛇口が付いているだけのタンクを買っているよ。タンクは20リットルで250~300円ぐらいだね。まだベトナム人は水道水を沸かして飲む人が一般的だけど、安いからタンクの水を買う人も増えているよ。水道代は1か月、家族4~5人で日本円にすると200円ぐらい。俺の家は2人暮らしだけど500~700円。お風呂のお湯に大量の水を使うから、料金が高くなっているんだと思う」
ベトナムでは大型ボトルウォーターの利用も増加
風呂好きの日本人はやはり現地の人よりも水道水を多く使っているようだが、それでも月に2人で700円は安すぎる。では、ベトナムのトイレ事情はどうなのだろうか? インドネシアと同様にトイレに紙を流してはいけないのだろうか?
「俺はトイレットペーパーを流しているけど、現地人の同僚に聞いたら、意見が割れて…トイレットペーパーを『流す派』『流さない派』で論争が始まった(笑い)。洋式便所がどの家庭にも入りだしたのがここ10年以内だから、昔の習慣で流さない人が多いんじゃないかな。だから、まだベトナム人は紙を流すと詰まると思っていて流さない人が多いらしい」
友人曰く、実際に紙を流しても問題はないらしい。
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以上、今回はアジア編を紹介したが、改めて普段当たり前にように何も気にせずに口に含める日本の水道水、そして紙を流しても詰まらない日本のトイレに感謝したい。
今回、調べて意外だったのが、同じアジアでも国によってさまざまな水事情があるということ。慣れない水質や地元のルールもあるので、ぜひ、皆さんも海外へ出かける時は、その国の水事情をしっかりリサーチしてからにしてくださいね。