日本の企業やウォーターサーバーメーカーが取り組む「水育」を深掘りリサーチ!
食べ物について知識を深め、良質な食材を摂取して健康な体作りを目指すことを子どもたちに啓蒙する「食育」が家庭や学校で広まっているが、水について同様な活動を行う「水育」もここ最近注目されるようになってきた。この考え方は、国内だけでなく海外へも広げようという動きもある。そこで今回は、最新の水育事情を見ていきたい。
◆東南アジアで「水育」が必余な理由とは?
私たちの生命活動に欠かせない水は、飲料水として体に取り入れるだけでなく実に多くのことに関わっている。身近なところでは手洗いや歯磨き、風呂、洗濯などの衛生を保つため。また産業では、農業から工業、飲食業に至るまで、水と無縁であることはまずない。水道や井戸の水は山や森が作り出すため、環境問題とも密接に関係している。水を軸にしたとき考えるべきことは、日々の暮らしから地球全体まで実に多岐にわたる。「水育」は、主に子どもたちに水の大切さを総合的に学んでもらおうというものだ。
水育に積極的な企業の一つが「サントリーホールディングス」。同社は周知のとおり、ウイスキーやビールだけでなくジュースやコーヒーなどの飲料も多く手掛けている。またミネラルウォーターとしてロングセラーの「サントリー南アルプスの天然水」は、ウォーターサーバー用の水としても提供されている。同社のサイトには、子どもから大人まで楽しめる「水育」に関する特設のコンテンツもあるほどだ。
サントリー「水育」これまで水育に関する活動を続けてきた同社は、水の大切さをさらに広く知ってもらうため、世界に向けての発信も積極的に行っている。2015年からはベトナムで水育を開始し、この7月からはタイでも始めている。同社によると、東南アジアから展開し始めた理由は、これらの地域はいまだに水への課題を抱えているエリアだからという。
実際にベトナムもタイも、水道水をそのまま飲むことは推奨されていない。現地の人でさえ市販のミネラルウォーターを買って飲んだり、沸騰させるなどの対策を採っていたりするほどだ。外務省は両国への渡航の際は赤痢やコレラといった伝染病への注意を呼び掛けているが、その背景には水の衛生状態がよくないことがまずある。
タイでは水質汚染が深刻
タイでは環境破壊が深刻だという。環境省の資料によると、1980年代から外資による積極的な工業化を行ってきたため、自動車の排ガスによる大気汚染や工場の排水による水質汚濁が進んでいる。首都バンコクにはチャオプラヤ川をはじめとする大きな河川が流れているが、水質検査を行うと大腸菌や重金属などが検出されるとのこと。また都市部だけでなく、自然が豊かで水源となっているタイ北部の環境汚染も深刻と報告されている。
サントリーでは、タイにあるグループ会社や地元NGOとも協力し、同社の工場近郊からタイの水源の多くを占めるチェンマイ県の小学4~6年生約1100人を対象に「水育」を実施するという。その内容は、水の大切さから始まり水源保全の重要性などについて、自然体験プログラムを通じて見識を深めてもらうというものだ。
同社では、タイの水環境を改善する具体的な事業にも取り組んでいる。タイ北部のチェンマイ県では、小型堰(せき)の設置や植樹などの水源保全活動を行った。これらは、小川に土砂が流れ込むことを防ぎ、キレイな水が地下にしみこんでいくことを助ける効果がある。水源に豊かな水をたくわえるために必要なことだ。
◆ウォーターサーバーメーカーが取り組む環境保全
水育の中でも大きなウエイトを占めるのが、こうした環境保全への意識だ。これはサントリーに限らず、水を扱う企業各社がテーマとして取り組んでいる。
ウォーターサーバーメーカーなら例えば、「クリクラ」では会社一丸となってエコ活動を進めている。2018年7月からは、全ての従業員526人に「マイボトル」を配布。それぞれが飲料を持ち寄ることで、会社内の自動販売機の台数を半減させ、さらにペットボトル飲料は入れないことにしたという。これにより、電力の消費とペットボトル廃棄物の削減を両立させた。同時にユーザーや関係各所に2万本のマイボトルの配布も行った。配送用トラックのハイブリッド化まで進めている。
「フレシャス」は、富士山の標高1000メートルの場所に採水地を設けている。開発限界地点であるため、これ以上高い場所には工場など作られることはないのだが、富士山周辺の環境を保全する活動を行っている。
「アクアセレクト」も、採水地である三重県大台町の宮川周辺地域の地元企業や住民らと協力し、河川や森林の保全を推進。また、学校や地域の行事などへウォーターサーバーを提供して、熱中症対策にも力を入れている。
子どもに「水育」をするなら、水についての知識を深めておきたい
各企業がエコ活動への取り組みをきちんと提示することは、水に対して普段意識していなかった大人への啓蒙にも繋がるのではないだろうか。こうした動きを知ることで、家庭でウォーターサーバーを使っている場合、日常飲んでいる水がどこから来るのか、なぜ安全でおいしく飲めるのかなどを、子どもに伝えていくこともできる。
夏休み期間も近づいている。水について改めて親子で学んで、この夏は「水育」をテーマにしてみてはいかがだろうか?