世界水紀行<1> 世界一の透明度ほかロシアの世界遺産の水
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また世界を見渡すと、さまざまないわくつきや由緒正しき「名水スポット」が存在しています。なかでも、1度は訪れてみたいのが世界遺産ですね。そこで今回は、ロシアの世界遺産「名水スポット」を3つご紹介しましょう。
◆3つの世界一を持つ、世界最古の湖「バイカル湖」
日本の45倍、約1710万キロ平方メートルの国土を持つロシア連邦には、26か所の世界遺産が存在します。その中で、1966年に自然遺産に登録されたバイカル湖は、世界一透明度が高いことから“シベリアの真珠”と呼ばれています。
また、外界から閉ざされた場所にあるため、唯一淡水に生息する「バイカルアザラシ」など、固有の生態系も進化しており、ガラパゴス諸島と並ぶ“生物進化の博物館”とも称されています。
ロシア東南部のシベリア連邦管区ブリヤ-ト共和国とイルクーツク州、チタ州に挟まれた場所にあり、南北に680kmに及ぶ湖水面積を持ち、大きさは琵琶湖の約46倍!
大きさは世界一ではないものの、貯水量は世界最大で、世界中の淡水の約20%近くがここにあるとされています。この巨大な三日月型の湖は、水質も日本の摩周湖を抜き、世界最高の透明度を誇っており、水深も世界一。
また、2500万年前に誕生した世界最古の断層湖(※1)でもあり、セレンガ川など336本の河川が流入していますが、流出するのはアンガラ川のみなのだそう。
真冬のバイカル湖は、毎日氷点下20度を下回り、時には氷点下70度にまで下がることもあるそうですが、この寒さには悲しい歴史も刻んでいるそう。
20世紀初頭、ロシア革命が起こった際、赤軍の手から逃れてきた白軍は追い詰められ、真冬のバイカル湖を渡ろうとしましたが、大寒波に襲われ、約25万人が凍死してしまったのです。春になり氷が解けると死者たちは深い湖の底に沈んでいったのだとか。
5か月間に及ぶ冬の期間は、湖全体が凍るのですが、湖水の透明度が高い水質は、青い光だけを通すため、雪の下にエメラルドグリーンの氷が輝く、美しい情景が広がります。
【バイカル湖へのアクセス】
防寒対策を完璧にして、その美しさを1度は見てみたいものですが、バイカル湖へは、日本からは飛行機で、成田からウラジオストック、またはハバロフツク経由でロシア国内線に乗り換えてイルクーツクまで約4時間。
ここから約70kmの距離にバイカル湖はあり、ツアーもしくは、ローカルバスで行くのが定番のよう。
また、バイカル湖南端に位置するスリュジャンカ駅からは湖岸を走るバイカル湖鉄道が走っています。
※1:地盤運動の結果地表に生じた断層盆地内に水がたまってできた湖『ブリタニカ国際大百科事典』より。 (参考資料『@世界遺産オンラインガイド2016』、『RETRIP』、『ジェーアイシー旅行センター』HP)
◆1500個以上の噴水がある“水の宮殿”「ぺテルゴフ」
2つめはサンクトペテルブルグの中心部から西へ約30km、フィンランド湾の南岸に面しているペテルゴフ。ここは、「サンクトペテルブルグ歴史地区と関連建造物群」として、1990年に世界遺産に登録されています。
18世紀、ロシア帝国全盛期にピョートル大帝が建設したペテルゴフ宮殿(夏の宮殿)と噴水庭園は、絢爛豪華で美しく、ロシアを代表する観光地の1つとなっています。
敷地内には、煌びやかな20の宮殿と、7つの美しい公園があり、なんと、150個もの噴水があるのですが、滝あり、像から流れ出るものあり、それらを見て回るだけでも圧巻です。
この公園には「上の庭園」と「下の公園」があり、「上の庭園」は、大宮殿に繋がっており、左右対称の貯水池のほか、噴水が設けられた池が3つ。その周囲には、並木道や果樹園、野菜畑などがあり、四季折々、色とりどりの景色も楽しめる癒しの空間でもあります。
そして、大宮殿のテラスから一望できる「下の公園」には、大滝が流れ、その水は「海の運河」と呼ばれる運河となり、フィンランド湾へと注いでいます。
「下の公園」のシンボル的な存在になっている「大滝とサムソン像」は必見。立ち並ぶ金色に輝く像と、その周りに見事に配置された噴水の競演には目を奪われます。
サンクトぺテルブルク中心部にあり、今では「エルミタージュ美術館」となっている「冬の宮殿」とともにぜひ訪れたいところです。
ちなみに、このサンクトペテルブルクの世界遺産は、ペテルゴフを含めて36もの登録があり、歴史地区は見どころの宝庫。ただし、残念なことに寒さが厳しい冬の間は、噴水が閉鎖されてしまうので、見ることができません。
稼働スケジュールは、毎年4月下旬頃から10月半ばまでとなっており、夏の間は観光客で込み合い、入場規制がかかることも。また、期間外に訪れても見られないのでご注意を。
【ペテルゴフへのアクセス】
成田空港からヘルシンキ経由でサンクトペテルブルクまで空路で約11~12時間。市街中心部から、高速ボートで約30分。庭園は入場無料(宮殿は有料)。
(参考資料『トリップアドバイザー』、『トラベルjp』、『TABIJIN』、『北欧トラベル』HP)
◆希少種や絶滅危惧種の宝庫「ウヴス・ヌール盆地」
ウヴス・ヌール盆地はモンゴルとロシアにまたがる世界遺産。1993年にロシアが8つの自然保護区を設定し、2003年にはモンゴルがテス川周辺をはじめとする4つの保護区を設定したことから、これらの12の保護区が世界自然遺産として登録されました。
モンゴルとロシアの自然保護区を合わせた総面積は、約1万688キロ平方メートル。この盆地にあるウヴス湖は、標高730mにあるモンゴル最大の湖で、塩水湖であるウヴス湖を中心とした広大な盆地です。
ユーラシア大陸において、自然がそのまま良好に保存されている反面、世界で最も北に位置する砂漠と、世界最南端のツンドラが併存する場所でもあります。
そして、シベリアと中央アジアの気候・地理上の境界にもなっており、気温は夏に最高47度、冬は最低-58度と極端に差があります。
砂漠には、アレチネズミやマダライタチ、山岳地帯にはユキヒョウやオオツノヒツジなど、41種の哺乳類や、173種の鳥類が生息しており、在来種はもちろん、希少種や絶滅危惧種が豊富に見られるほか、スキタイ遺跡など4万に及ぶ遺跡も発見されています。
【ウヴス・ヌール盆地へのアクセス】
成田から空路でモンゴル北西部の首都ウランバートルまで約5時間。ウランバートルから北西へ約1300km。
(参考資料『@世界遺産オンラインガイド2016』、『エイビーロード』、『世界遺産への生き方』)
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広大な自然を誇る、ロシアの水ゆかりの世界遺産。寒さが厳しい場所や寒暖差の激しい場所に存在していましたが、自然の厳しさが残っているからこそ、その美しさも残っているのでしょうか。1度は訪れて、現地の世界遺産の水を味わってみたいものです。