「水」の大切さをあらためて考えさせられる名作映画案内
アニメ映画『君の名は。』が現在、空前の大ヒットを記録しているが、実は「水」をテーマにした映画というのも、海外・国内作品ともにあるのだ。
今回は、水の大切さや地球における水の現状を考えさせる作品など、水にまつわるオススメの映画をご紹介しよう。ファンタジー、ドキュメンタリー、ドラマとそれぞれスタイルは違うが、どれもジンワリ心に沁みる作品だ。
◆『水の旅人-侍KIDS-』(1993年公開)
- DVD『水の旅人-侍KIDS-』
- 監督:大林信彦
- 原作・脚本:末田真澄
- 出演:山崎努、吉田亮、伊藤歩、原田知世ほか
- 発売元:フジテレビ/オフィス・トゥー・ワン/東宝
- 販売元:ポニーキャニオン
- 価格:4104円
この作品は、時空を超えてやってきた一寸法師のような侍と少年の交流を通し、少年が成長する姿が描かれているが、もうひとつ、彼らの水源への旅を通して水や自然の尊さが心に沁みる作品になっている。
物語は、小学2年生の楠林悟(吉田亮)が、川原で雷に打たれて動けなくなった身長17cmの老武士(山崎努)を助けたところから始まる。
息を吹き返したこの武士は墨江少名彦(すみのえのすくなひこ)と名乗り、自分は水源から来た水の精で、海を目指していると言う。
悟の家で暮らすようになった少名彦は、ゴキブリと闘ったり、ネコと戯れたりしながら、勇気や自然への優しさなどを教えていくが、水質汚染で体を蝕まれた少名彦の体はだんだん衰弱していく。悟は少名彦を助けようと、きれいな水を求めて山に入るが…。
大林監督が全編の90%を、当時最新のハイビジョン合成技術を駆使して描き、公開当時、話題になった作品だ。身近な小川がどこからきて、どこへつながっているのか? そして、きれいな水は当たり前ではないことなど、改めて考えさせられる作品でもある。
◆『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』(2008年公開)
- DVD『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』(2008年公開)
- 監督:サム・ボッゾ
- 出演:モード・バーロウ、トニー・クラークほか
- ナレーション:マルコム・マクダウェル
- 販売元:アップリンク
- 価格:4104円
この作品は、デヴィッド・ボウイのSF映画『地球に落ちてきた男』の続編を考案中に、モード・バーロウ・クラーク著の『「水」戦争の世紀』(集英社新書)を読んだサム・ボッゾ監督が、“SF映画よりも今、地球に起きていることをすぐにでもドキュメンタリーとして撮らなければ”という思いにかられ、制作したという衝撃作。
映画冒頭、1人の男が金鉱を求めて旅立ち、水が切れて1週間生き延びた経験を記録した…という話が語られるが、その話のなんと恐ろしいことか! でも、それは序の口で、そこから世界各地の水にまつわるさらに恐ろしい現状がたんたんと紹介されていく。
日本にいると当たり前のように手に入る水だが、地球の水は97%が海水で淡水はわずか3%しかない、という事実。地下水をどんどん汲み出したことで、沈んでしまった都市があったこと…などなど。
20世紀が“石油戦争の時代”とすると、21世紀は“水戦争の時代”と言われているそうだが、このままいけば50年後には地球の水資源が枯渇する可能性もある、とも作中で語られる。
でも、お先真っ暗かというと、この現状を変えていく解決策も提示されていて、すでに活動している人々がいることや自分がどうするべきか?ということの大切さも教えてくれる内容となっている。
ちなみに、この映画のHPには、日本の水に関する課題が「グローバルウォータ・ジャパン」代表で国連環境技術顧問の吉村和就氏の言葉で次のようにまとめられている。
「日本の水に関する課題としては、これから食糧自給率を高めるために、水資源をどのように確保するのかという課題があげられます。
それから、洪水、高潮、渇水などの水災害への対策があります。
そして、大事なのは上下水道のインフラ整備です。戦後作られたパイプや浄水場や下水処理場が老朽化しており、特にパイプは40年で取り替えるのが基準ですが、昭和30年代からつくられたものが老朽化して、各地で陥没や漏水事故を起こしています。
水道管では年間約1,200ヶ所が破裂し、下水管では年間約4,700ヶ所で道路の陥没を起こしています。このように老朽化が加速度的に進行しています。
現在は蛇口をひねると安全な水道水がでてきますが、今後は適切な維持管理や古くなった施設のリハビリ等、国を挙げて取り組む必要があるでしょう。
また水問題は、その裾野が広く、多くの利害関係者がおりますので、それらの叡智を集めて日本の水問題解決に努力することが今求められています」
◆『マザーウォーター』(2010年公開)
- DVD『マザーウォーター』
- 監督:松本佳奈
- 出演:小林聡美、小泉今日子、加瀬亮、市川実日子ほか
- 発売元:バップ
- 価格:5184円
- (c) 2010パセリ商会
この作品の舞台は、街の中に大きな川が流れ、そこにつながる小さな川や湧水がいくつも存在している京都。水をキーワードに、京都を舞台に慎ましくも豊かに暮らす人々の生活を描いている。
物語は、ウイスキーバー店主のセツコ(小林聡美)、コーヒー店店主のタカコ(小泉今日子)、豆腐を作るハツミ(市川実日子)という3人の女たちと、銭湯の主人(光石研)はじめ、彼女たちとかかわる街の人との日常が描かれていく。
賀茂川にかかる上賀茂橋や鴨川荒神橋の飛び石、白川疎水沿、藤森神社で水を汲む場面などがさりげなく登場するが、「川のある生活っていいな」と素直に思える心地よさが感じられる作品だ。
監督は、『かもめ食堂』『メガネ』『プール』という“人と場所”そんなシンプルな関係性を描き人気を得ている松本佳奈。川の流れのように時も流れていくが、今、一番大事なことは何なのか? そんなことも考えさせられる作品となっている。
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日本人は遙か昔から、水に恵まれ水とともに暮らしてきた。そして、世界でもトップクラスの安全なおいしい水が飲める国だと思っていた日本だが、実はさまざまな課題を抱えていたのだ。
先日も、老朽化した東京電力の送電ケーブルからの出火で、東京都内で大規模な停電が起こる事故があったばかりだが、上下水道の老朽化にも直面していたという事実も…。
国や地域での取り組みとして、災害時などに備えた確実な水資源の確保が必要なのと同時に、個々の家庭でも常時からミネラルウォーターのストックを欠かさないことも大切だ。
また、より安全・安心な水をストックしておくという意味では、ウォーターサーバーも強い味方になるだろう。