東京都内にもあった! 癒しの「わき水スポット」
あなたは、わき水を飲んだことはありますか? 川や滝などにドライブに行った際に「ご自由に汲んでください」という手書きの看板を目にしたことはありませんか?
水道の蛇口をひねれば水が出て、スーパーやコンビニエンスストア、自動販売機でミネラルウォーターがいつでも買える日本。オフィスや美容室、病院などでウォーターサーバーが設置されているのも珍しくなくなってきました。
都市部ではわき水を目にする機会はほとんどないですが、生活に取り入れ、飲み水として日常的に使っている地域も少なくありません。近年では災害対策として、井戸水もその価値を見直されています。都内の高層ビルや高齢者向け施設などでは、災害を想定して井戸を掘っているところがあります。
日本各地のわき水には、「健康になった」、「肌がきれいになった」、「とにかくおいしい」…など口コミでその噂が広まっているものもあります。車で何時間もかけて汲みにくる人が列を作っていたり、あまりにも人気になりすぎて一人が汲める量に制限をかけているところもあります。
また、その水にまつわる伝説や神話があり、パワースポットとして人気があるところも少なくありません。わき水は飲むだけでなく、音に癒されたり清々しい雰囲気を楽しむこともできます。
◆東京都心にもわき水があった!
「自宅や職場の周りにわき水なんてないよ」とお嘆きの方、本当にそうでしょうか? たとえば東京にもわき水はたくさんあります。
東京都環境局のホームページには「東京の名湧水57選」が掲載されています。そこには、港区の「柳の井戸」、新宿区の「おとめ山公園」、渋谷区の「清正の井」のように都心にあるものも少なくありません。
「柳の井戸」(港区元麻布1-6 善福寺前)は、港区の文化財にも指定されていて、災害時に飲用水として使用されたこともあります。近隣には史跡が点在していて、お散歩スポットとしてもおススメです。
善福寺の参道わきにあり、都内でも数少ない自噴している井戸です。弘法大師が柳の木の下で杖を立てたところ、水が湧き出してきたという伝説があり、今も柳の木が守っています。
「おとめ山公園」(新宿区下落合2-10)は、新宿区内に唯一残された武蔵野の面影を残す樹林地で、江戸時代からホタルの名所として知られています。ホタルの幼虫はきれいな水が必要であることからも、ここの水の良さがわかります。
おとめ山公園の敷地周辺は江戸時代、将軍家の鷹狩りや猪狩りなどの狩猟場になっていて立ち入り禁止でした。そのことから「おとめ山(御留山、御禁止山)」と呼ばれるようになり、現在の公園の名称の由来になっています。湧水、池、斜面樹林地からなる自然豊かな公園で、水のある公園として親しまれています。
「清正の井」(渋谷区代々木神園町1)は、明治神宮の森の地下水が湧き出しており、枯渇の心配がないといわれています。安土桃山・江戸時代初期の武将である加藤清正が掘ったとされるこの井戸は、四季を通じて水温が15度前後と一定で毎分60リットルの水量があります。
明治神宮のホームページによると、水源は御本殿西側権殿敷地付近一帯(現在の本殿倉庫)の浅い地下水が二方向の自然の水路に流れて、井戸の上方斜面から井戸に湧出する自然の湧水であることがわかったとのこと。
テレビでパワースポットだと話題になり、女性を中心に携帯電話、スマートフォンの待受画像にするために井戸に列をなしていたこともあります。
◆都内唯一の渓谷を散策
都内には他にもわき水スポットが多数あります。わき水は舌だけではなく、目と耳で楽しむことも。たとえば、「等々力渓谷・等々力不動尊」(世田谷区等々力1-22先)は、都内唯一の渓谷で東京都指定名所になっています。
数多くの湧水が渓谷内にあり、かつて修行に用いられたという不動の滝は「等々力」の地名の由来ともいわれています。
ここは桜の名所としても知られ、東急大井町線等々力駅から歩いて5分ほど。渓谷は散策することができるようになっています。等々力不動尊の本堂まで、ぜひ歩いてみてください。隣接のお休み処「雪月花」では、滝の音を聞きながらお菓子付きのお抹茶、おしるこ、ところてん、夏はかき氷やラムネを楽しめます。
また境内にある売店「四季の花」は、ソフトクリームとコーヒーがおいしいと評判です。ちなみにソフトクリーム300円、コーヒー100円とうれしいお値段。冬は、しょうが湯もメニューに加わるそうです。
◆わき水利用の注意点
わき水を飲んでも健康に影響がないかどうか、汲んで持ち帰ってもOKかどうかは、管理者の公式ホームページや現地の注意書きを詳しくチェックしましょう。水道水のように目で見てきれいだからといって、むやみやたらに飲まないように要注意です。
井戸水やわき水は、天候や季節など環境の影響を受けやすく、水質が変動することがあります。個人や地域で管理している湧水や井戸水は、市販のペットボトルの水やウォーターサーバーの宅配水のように法的な水質基準などは定められていないので、各自の責任で飲むかどうかを判断することになります。
もし飲用する場合には、大腸菌などの細菌汚染を少しでも低減するため、煮沸などの衛生対策をしましょう。
<参考>