「軟水」と「硬水」の性質、特長、メリット&デメリットを徹底検証!
ウォーターサーバーを使っていたり、ペットボトルのミネラルウォーターを指名買いしたりといった、「水偏差値」の高い人なら、水には「軟水」と「硬水」があることをよく知っているのではないだろうか。この水質の違いは水の味を左右する他にも、実はいろいろな特性を持っている。そこで今回は、それぞれの特性やメリット、デメリットなどについて徹底検証してみたい。
◆軟水と硬水の違いとは?
水の硬度は、含有されるカルシウムとマグネシウムの量によって変わる。世界保健機関(WHO)の基準では、水1リットル中に120ミリグラム以上含まれていれば硬水、それより少ないものを軟水としている。この基準値は国によって違うことがあり、アメリカやフランスでは100ミリグラムを境としている。
なぜ硬水が生まれるかというと、地下水が流れている場所の地質よる。カルシウムを含んだ石灰岩の地層を流れてきた水は、硬水になりやすい。欧米は地質的に硬水が生じやすく、例えば「エビアン」は硬度300。つまりカルシウムやマグネシウムが、1リットル中に300ミリグラムも含まれていることになる。エビアンの採水地があるフレンチアルプスは、石灰岩地層が多いためにこうした硬水になるわけだ。
対する日本は軟水になりやすい土壌で、100を超える硬度の水はそう多くない。東京都の水道水は60前後。全国平均でもこの程度に収まる。
国内のウォーターサーバーに使われている水も、ほとんどが軟水だ。「コスモウォーター 静岡の天然水」は53、「うるのん」は29、「キララ」は28といった数値。「アルピナウォーター」はさらに低く、1.05である。
しかし、日本でも硬度の高い水を産出する地域はある。有名なのが沖縄県。琉球石灰岩地層の上にあるため、地下水にカルシウムが含まれやすいのだ。また、滋賀県の伊吹山、岐阜県の金生山などは石灰岩でできているため、周辺の水の硬度は高めになる。石灰岩が水で浸食されて作られた鍾乳洞のある流域なども同様だ。
では、硬度の高い低いで何が違ってくるのか? まず「味」があげられる。硬度の高い水を「重い味がする」と評する人もいる。ミネラル分が多いため、そう感じるのかもしれない。ちなみにカルシウムには、米国での研究で苦みや渋みのような味があることがわかっている。
もう一つは、食品に対する浸透性。軟水の方が食品によく浸み込んで、成分を抽出する働きが高いことが、多くの研究によって確かめられている。もともと含まれる物質が多いと、浸透する際、邪魔をしてしまうからだ。したがって、お茶をいれたり出汁を取ったりするには、軟水が有利といわれている。日本人が昔から飲んできた軟水は、出汁や煮物などの食文化とマッチしていたわけだ。
お茶の抽出には軟水が向いている
◆「洗い物」に向いているのは…?
生活シーンの中で水を使用する状況としては他に、手洗いや入浴、洗濯などが思いつく。ではそこで、石けんと相性がいいのは硬水だろうか、軟水だろうか? 答えを先に言うと、実は軟水の方が適しているのだ。これも多くの研究によって実証されている。
日本石鹸洗剤工業会の資料に、理由が掲載されている。それによると、硬水で石けんを溶かすと、カルシウムやマグネシウムが石けんと結合し「金属石けん」を生じるからだという。「金属石けん」とは俗に「石けんかす」とも呼ばれるもので、白っぽいゴミのようなものだ。これは、泡立ちの元になる界面活性剤の働きを低下させてしまう性質を持っている。
つまり硬水を使うと泡が立たず、通常の使い方ではしっかり洗うことができなくなる可能性があるというのだ。洗濯も同様で、汚れ落ちに差が出てしまう。同工業会では、硬水で石けんを使うときは、硬水用の石けんや洗剤を選ぶか、量を多めに使うことを推奨している。
ちなみに「合成洗剤」と呼ばれるタイプの製品は、硬水にも適している。ヨーロッパ地域で合成洗剤が発達したのは、硬水に対応しているからという説が有力だ。
硬水だと泡がよく立たない?
京都府健康福祉部によると、洗い物以外に硬水は、ボイラーなどの冷却用水として使うと「かん石」という石化したミネラルが付着し、性能を低下させたり設備を腐食させたりするとのこと。工業製品の原料としても、硬水は向いていないのだ。
こうして硬水の性質を見てくると、生活上困るケースが多い水のように思えてくる。しかし、硬水はミネラルが豊富なため、ミネラル不足を補いたいときには有効だ。人によっては硬水の「重い味」の方が好きだという場合もあるだろう。さらに、硬水は酒を醸造するとき、発酵の助けになることが知られている。実際、多数のブランドの硬水ミネラルウォーターが販売されており、それを指名買いしている人も多い。
また、ウォーターサーバーの水を洗い物に使うというのは、ピンと来ないかもしれないが、「キララ」では炭酸水が作れるため、それを洗顔に使う提案をしている。水道水のように塩素が含まれていない水の方が、どちらかといえば肌に対しても優しいのは確かだ。ちなみに、もし贅沢にミネラルウォーターで顔を洗いたいという場合は、エビアンやコントレックスのような硬度の高い水ではなく、軟水を選ぶといいだろう。
どれも変わらないように思える水にも、実は適材適所がある。ふだん愛用しているウォーターサーバー水の性質を、改めて調べてみると面白いかもしれない。