環境省の「レッドリスト」から絶滅危惧種のサンショウウオと水環境についてレポート!
ウォーターサーバーの水も含めて国内のミネラルウォーター製品に使われている天然水は、安全でキレイな地下水を使っていることが多い。また採水地は、周囲の環境の影響を受けないような人里離れた場所が選ばれる。こうして地下から汲み上げたクリーンな水を飲める私たち人間と違い、環境汚染の被害を受けやすいのは、水のあるところに生息する生物たちだ。今回は環境省の「レッドリスト」から、水と土の両方に深いかかわりを持つサンショウウオを中心に、生き物と環境問題について調べてみた。
◆絶滅危惧種はなんと3600種以上!
環境省では毎年「レッドリスト」という、絶滅あるいは絶滅のおそれのある生物のデータを発表している。トキやアマミノクロウサギなどはよく知られているが、昆虫や植物、コケなど全て含めると、2019年版ではなんと3676種もあるのをご存じだろうか?
絶滅危惧種は、絶滅、野生絶滅(飼育・栽培あるいは自然分布域の外側で、野生化した状態でのみ存続している)、絶滅危惧1類(絶滅の危機にひんしている種)、絶滅危惧2類(絶滅の危険が増大している種)など、9つにランク分けされている。
原因としては多くのことが考えられる。水や大気、土壌の汚染、開発による生息域の減少のほか、外来種によって食べられたりエサがなくなってしまったりすることなどだ。特に、水は全ての生物にとってなくてはならないものだ。水の汚染は、川に直接、廃水が流れ込むケースだけでなく、周囲の土に散布された農薬などが溶け込んでも起こる。また汚染されなくても、上流にダムができたことで水量や水質が変化して環境が変わり、生物が住みづらくなることもある。
絶滅危惧種は前述のように非常に多くの種類がいるので、ここでは水と地上と両方で生活する両生類に注目してみた。
2019年版レッドリストに登録されている両生類は52種。カエル、イモリ、サンショウウオなどが含まれる。両生類とはその名の通り、水中と地上両方で生活する性質を持った生物で、主に子どものときは水中、成体になると地上で暮らす。カエルとオタマジャクシが代表的な例だ。環境省などの資料によると、サンショウウオは種類にもよるが、渓流、沼地、湿地などを好み、成体は水の近くのほか、山林の落ち葉の下などを生活拠点にすることもある。つまり、水だけでなく土壌の環境にも左右されてしまう生物なのだ。
両生類の絶滅危惧種で多いカテゴリーも実はサンショウウオで、52種のうち28種がサンショウウオにあたる。そこで、サンショウウオを軸に見ていきたい。
怪獣のようでいてユーモラスなオオサンショウウオも絶滅危惧種
サンショウウオというと、国の特別天然記念物に指定され、レッドリスト入りも果たしているオオサンショウウオを思い浮かべる人も多いだろう。体長が50センチ以上にもなり大きな口を持つユーモラスな姿が印象的だが、一方、小型のサンショウウオにはいろいろな種類がいる。絶滅危惧種に指定されているものでは、ミカワサンショウウオ、アマクササンショウウオ、ツクバハコネサンショウウオ、ホクリクサンショウウオ、オオイタサンショウウオなどがある。
名前を見て想像がつくと思うが、生息エリアを名前に入れていることが多く、サンショウウオの仲間は全国に分布していることがわかる。実はトウキョウサンショウウオというのもいるのだ。
◆地元住民が進んで環境保全
生息域が違うだけなんじゃないかと思いがちだが、実はそれぞれ固有の種類だ。希少であるため、保護する取り組みが各地で行われている。例えば富山県と石川県の一部にしかいないホクリクサンショウウオ。開発で沼や池の埋め立てが相次ぎ、生息域が減少したため、富山市や住民、大学が協力して、沼地のある里山を作る活動を始めている。自然に任せず人為的に作ることの理由は、耕作放棄地では雑草や竹が生い茂って水を吸い、サンショウウオが住める場所を奪ってしまうからとのこと。岐阜県でもヒダサンショウウオを守るために、中学生らが保護を進めている。いずれもいい水を産出する地域だが、環境破壊の余波は思った以上に深刻なようだ。
乱開発や不法投棄が生物が暮らすエリアを奪っていく
環境保護は、キレイな水と深い関係があるウォーターサーバーメーカーも行っている。例えば、「フレシャス」では富士山周辺の保全活動に力を入れている。「プレミアムウォーター」も、採水地がある南阿蘇の自然の保護や地震後の復興支援を行っている。また、「アクアクララ」では環境省の「水の日」イベントに協賛している。これらのメーカーは単純に水源や川だけでなく、いい水を作り出す山林やその周辺のエリアをトータルに支援しているのだ。それは長い目で見れば、レッドリスト入りしている生物たちを救うことにもつながるかもしれない。
自然界が自浄できる汚れやにごりには限界がある。空気や土も含めて、もともといた生物が生活し、繁殖できる環境を保護していかなければならないのだ。それはひいては私たち人間が、いつまでもおいしく安全な水を飲み続けられることにつながっていくのではないだろうか。