ウォーターサーバーにも使われているRO水は精密機器製作の現場でも必需品だった!
水は普段、飲んだり料理に使ったりするほか、手や体を洗ったり洗濯やトイレの排水など身近なところでさまざまに利用している。一方、産業においても製品や工作機械を洗浄するときにも、なくてはならないものだ。工業用水も川や湖や地下からの水を使うことが多いが、特に精密機器製造に関しては非常にクリーンな水を必要とする。実はこの水が、ウォーターサーバー用の水とも関係しているようなのだ。
◆精密機器に純度の高い水が必要な理由とは?
私たちの日常生活でも、水を使って機械などの汚れを落とす場面は少なくない。車や自転車を洗ったり、キッチン家電やエアコンのフィルターなどの洗浄だ。多くの場合は、水道水をそのままかけていることだろう。もちろん、その方法で基本的に問題はない。
ところが精密機器となると、わずかな不純物が製品の品質を左右してしまう。例えばスイスでは古くから時計作りが盛んだが、これは空気がキレイな地域のため、小さな歯車や微細なパーツにゴミが入りにくい環境であったことが大きい。部品洗浄のための水も、ロンドンやパリといったヨーロッパの大都市よりもクリーンだ。同様の理由で、日本では長野県の諏訪湖周辺に時計やカメラなどの工場が多く集まっている。
近年、技術発展により、さらに精度を求められる機器が欠かせないようになった。例えばパソコンや携帯電話に使われているICチップなどの半導体部品。サイズの小ささもさることながら、ゴミの付着状態によってはデータにエラーが出てしまう。製造時、水で洗い流す工程が発生することがあるのだが、透明で無味無臭に見える水でも実はいろいろな物質が溶け込んでいる。
特に自然界に存在する水には、必ずといっていいほどミネラル分が含まれている。多いものではカルシウムやマグネシウムで、鉄やカリウムも微量に含まれていることがある。また、ウォーターサーバー用の水として人気の、富士山麓からの水「フレシャス富士」、「富士桜命水」、「コスモウォーター 静岡の水」などには、バナジウムというミネラルも成分として入っている。これは富士山麓に特に多いミネラルだという。
水に含まれる成分は精密機器にとって不要なことがある
水道水にも、もともとこうしたミネラルが含まれているが、さらに浄水場で殺菌用の塩素が投入されている。何も入っていないように見えても、水の中には多くの物質が入っていることがわかるだろう。浄化していない水となると、砂の微粒子や微生物などもっと多くの不純物が混入していることになる。
こうした目には見えないミネラルも、0コンマ以下の精度が求められる機械となると無視できなくなる。洗浄した水が蒸発したときにミネラルや塩素の粒子が残っているのでは、後に何らかの影響が出る懸念がある。そこでできるだけ不純物のない水が求められるようになったのだが、そうしたクリーンな水を生成するろ過器において近年主流なのが「RO膜」だ。
◆ウォーターサーバーでも人気のRO水
RO膜は「逆浸透膜」とも呼ばれるフィルターの一種だ。フィルターの穴の大きさは、なんと100万分の1ミリクラス。一般的な家庭用浄水器に使われる中空糸膜は1000分の1ミリ程度なので、いかに細かい目であるかがうかがいしれるだろう。
RO膜によるフィルタリングでは、ウイルスや重金属、一部の放射性物質まで除去してしまうことがわかっている。これにより非常にクリーンな水が出来上がるわけだが当然、もともと含まれていたミネラル類も除去されてしまう。
ウォーターサーバー用の水の生成にRO膜を使っているメーカーの一つに、「アクアクララ」がある。RO膜を通して出てきた水は、ほぼ純水のため、ミネラル分を追加して調整している。水はある程度のミネラル分が含まれているほうが「水に味がある」という評価もあるため、RO膜で飲料水を生成する場合には、マグネシウムやカルシウムなどをあえて加えてから製品化されることがあるのだ。
RO水を使用しているウォーターサーバーメーカーの中でも「アルピナウォーター」の場合は、ほぼ純水に近い水を提供している。しかも採水地は長野県の人里離れた山中の地下水で、最初から非常にクリーンなもの。それをさらに、RO膜によってろ過しているのだ。純粋な水の成分以外ほとんど通さないRO膜といえども、元の水がキレイであることが重要という同社の考え方によっている。
そのため「アルピナウォーター」は、水に含まれるミネラルの量によって決まる「硬度」は1.05。硬度0が純水であるから、ほぼ混ざりものがなく、ウォーターサーバー用の水の中でもトップクラスの低さといっていい。また同社では、高精度にろ過した水を活かすためミネラルの添加は行っていない。
ほぼ純水に近い「アルピナウォーター」 ※画像はメーカーサイトより
とはいえ、長野県の大自然からわき出した天然水そのままのおいしさを味わいたいというユーザーのため、「アルピナウォーター」ではRO膜を通さずに生成した水を別途、「信濃湧水」というブランドで販売している。
人間が何となくスルーしてしまうことでも、精密機器においては許されない。それがRO膜のろ過能力の証明ではないだろうか。そのうち人工知能が「この水は機械にとっておいしい!」などと評価し始める時代が来るかも…?