呼吸器専門医がアドバイス! インフルエンザ対策には「喉をうるおすことが大事」
「水分補給が大事!」と聞くと、多くの人は夏場の熱中症対策を思い浮かべるのではないだろうか。確かに秋から冬にかけて気温が低い季節は、熱中症になる危険性は低い。しかし、水分をしっかり摂らないといけない冬ならではの状況がある。それは、インフルエンザだ。今回は、専門医のアドバイスや厚生労働省などの資料をもとに、寒い時期の水分補給について考えてみよう。
◆喉の粘膜はウイルスの関所
今夏は40度近い高温の日が続いた地域も多かったため、厚労省や環境省では熱中症の予防や対処のための水分補給を、さかんに呼びかけていた。ウォーターサーバーのある家庭では、冷水をよく飲んだのではないだろうか。水温が5~10度というウォーターサーバーの水は、おいしく飲める温度でもあるし、緊急の場合はタオルを浸して冷たいおしぼりを簡単に作ることも可能だ。
一方、冬になると猛威をふるうのがインフルエンザ。熱中症は正しい処置を行えば短時間で回復することがあるが、インフルエンザの場合、完治するまで1~2週間かかることもあり、他人に感染させてしまうリスクがあるのがやっかいだ。特に「パンデミック」と呼ばれる大流行が、近年では危険視されている。感染の拡大を防ぐため厚労省は「インフルエンザ対策」という専用のサイトを開設しているほど。その中に「インフルエンザQ&A」があり、非常にくわしい説明が掲載されているので参考にしてほしい。
とにかく大切なのは予防だ。インフルエンザにかからないようにするためには、何が大切なのだろうか? 呼吸器専門医として多くの患者を診てきている、「池袋大谷クリニック」院長の大谷義夫先生は解説する。
「喉の粘膜には、線毛(せんもう)という細かい毛が張りめぐらされています。これは喉の免疫力の中核を担う器官です。線毛は粘液で覆われていて、ウイルスなどの異物を排除する働きがあります。でも、喉がうるおっていないと十分に機能しないのです。インフルエンザは、飛沫感染や接触感染によって鼻や口から入り込みますから、喉でシャットアウトできるようにしておかないといけません。インフルエンザウイルスは気道に入ると、比較的短時間で感染してしまいますから」(大谷先生、以下「」内は同)
喉の粘膜の「線毛」はウイルスの侵入をシャットアウトしてくれるが…
喉はまさにウイルスの「関所」というわけだ。空気が乾燥しがちな冬は口の中も同様に乾き、外敵の侵入を許しやすい環境となる。そこで、線毛が常に粘液で覆われるようにしておけばいい。
感染から喉を守る方法として「うがい」を思い出す人もいるだろう。昔から「うがい・手洗い」とセットになって、予防の基礎として考えられてきた。ところが、うがいはインフルエンザ対策として決して有効とはいえないそうだ。大谷先生も、うがいの効果が最近では疑問視されていると指摘する。
◆「緑茶」と「レモンウォーター」が予防のカギ
「私は患者さんを診るたびに、緑茶で水分補給をしています。理由は、緑茶に含まれる成分であるカテキンに、ウイルスからの感染を防ぐ働きが期待できるからです。そして、口の中の乾燥を予防するため。だいたい、7~10分おきに1口、緑茶を飲んでいます」
これは非常に簡単な予防法といえそうだ。緑茶は入手しやすい上に、ウォーターサーバーならいつでもお湯が出せるから、簡単にいれることができる。
それともう一つ、大谷先生が推奨する水分補給法がある。
「レモンウォーターを常備しておくことです。水を入れたガラスのポットに、カットしたレモンを入れておいたものでかまいません。昔からビタミンCがいいといわれてきましたが、実際に行われた調査で、重労働をした人がビタミンCを摂っていたら風邪の予防に有効だったという結果が出ています。意識的にビタミンCを体に取り入れるようにしましょう」
ビタミンCは粉末やサプリメントなども売られているが、レモンウォーターなら喉をうるおすこともできるから一石二鳥だ。また、レモンに含まれるクエン酸などの有効成分も摂取できる。
冬場はレモンをたっぷり入れた「レモンウォーター」を常備しておきたい
ウォーターサーバーに使われている水の多くは、マグネシウムやカルシウムといったミネラル量が抑えられた「軟水」だ。水は含有物質が少ない方が食材への浸透が進み、成分を効率よく抽出できる。また、塩素などの防腐処理剤が入っていないので、カルキ臭の問題もない。レモンの味と香りを活かせる点もメリットだ。
好みにもよるが、より多くビタミンCを摂るためには、レモンを多めに入れたらいいだろう。皮ごと使うときに心配になるのがワックスだが、ワックス不使用の国産レモンも多く出回っているので、それを選べば問題ない。
「冷え込みも厳しくなり、年末年始の多忙な時期。お茶とレモンウォーターを、いつでも飲めるようにしておいてはいかがでしょうか」
温かい方がよければ、ウォーターサーバーの温水でホットレモンを作ったり、レモンティーにしたりしてもいい。ワクチン接種や防寒対策とあわせて、大谷先生オススメの「喉のうるおいケア」を実践して、この冬のインフルエンザに立ち向かっていこう!