冷水、常温水、熱湯…水やお湯の呼び方に合った正しい温度って?
水は0度で氷になり、100度で気体となることは小学校の理科の授業で教わったはずだ。その間が液体の状態ということになるが、温度の違いで水にはいくつもの段階があり、それぞれ表現の仕方が異なる。そうした水の状態を表す名称に関しては、具体的な数値としての基準はあるのかなどについて、各種の資料をもとにいろいろリサーチしてみた。
◆国が定めた水の温度の概念とは?
水が固まったものは氷、気体になったものは水蒸気。一般的な呼び方では、それ以上の表現はまずないだろう。ところが、液体の状態の水は温度によっていろいろ呼び名が変わる。「冷水」、「常温」、「ぬるま湯」、「お湯」、「熱湯」…といった具合だ。そもそも「水」と「お湯」とに分けられてはいるが、ほんのり温かい場合は「温かい水」なのか「温度の低いお湯」なのか──?
なんだか哲学的な話になっていきそうで悩んでいたところ、非常に明解な答えが公式に出ていることがわかった。厚生労働省が定める「日本薬局方」である。法律とは違うので、「方」の字があてられている。これは医薬品の品質適正化のため、同省が審議会や識者の意見から定めた規格基準書のこと。
それを参照すると、「冷水は10度以下、微温湯(びおんとう)は30~40度、温湯は60~70度、熱湯は約100度の水とする」とある。国が定義しているものだから、明確に定められているのかと期待したが、意外とアバウトである。ちなみに室温の定義は1~30度と、それに輪をかけてざっくりしている。では、冒頭であげた「冷水」、「常温」、「ぬるま湯」、「お湯」、「熱湯」の温度がどの程度を指すのか、もう少し詰めてみよう。
まずは「冷水」。冷たい水というわけで、氷が溶けた1度以上ということになる。一般的には1~10度くらいが冷水となりそうだが、ウォーターサーバーの冷水の基準と照らし合わせてみよう。
「コスモウォーター」が6~10度、「クリクラ」、「フレシャス」、「アルピナウォーター」はそれぞれ4~10度、「キララ」では3~8度という設定が確認できた。これをもとにすると、冷水は5~10度くらいの温度の水と考えていいのではないだろうか。
また、冷水温度を4~12度に設定している「うるのん」によると、冷たい水がおいしく感じられる温度の目安は体温よりマイナス20~25度なのだという。
次に「常温」について見ていこう。食品のラベルで「常温保存可能」というのを目にするが、この常温についても厚生労働省が「外気温を超えない温度」と定めている。夏場の直射日光の当たらない場所での気温を想定しており、「外気温」とは言っても屋外の気温のことではない。日本薬局方での常温も、定義は15~25度。これは妥当な数値かもしれない。
「アクアクララ」では常温の水は20~35度としており、胃腸への刺激が少なく体温もほとんど奪われないため身体へ負担をかけず、薬を飲むときの温度として適しているという。ただ、ウォーターサーバーではこの温度の水は出せないため、温水と冷水を混ぜるか、温水を冷まして作る必要があるだろう。
氷が溶けたら「冷水」?
それから「ぬるま湯」。これについてハッキリとした基準があるわけではないようだが、一般的な感覚としては「ほんのり温かいレベルの水」ではないだろうか。料理のレシピサイト「クックパッド」では、「およそ30~40度」で、手でさわって熱くない程度の温度を、ぬるま湯としている。これは日本薬局方では、「微温湯」のカテゴリーに入る。ただ40度になると風呂の湯温くらいになるので、人によって意見は分かれそうだ。
ちなみに日本酒のぬる燗や赤ちゃん用のミルクでよくいわれる「人肌」はもっと幅が狭く、36度前後であるのが通例のようだ。
◆「お湯」の概念について探る
さらに温度が上がると、日本薬局方で言う「温湯」になる。定義は60~70度。これくらいになると、緑茶をいれるのに適した温度の帯域になる。つまり、「お湯らしいお湯」といえるのではないだろうか。一般的な電気ポットの保温状態では、この範囲の温度に保たれていることが多い。
ほとんどのウォーターサーバーには、お湯を出す機能が備わっている。その温度がどれくらいかを調べてみると、「フレシャスdewo」は80~90度、「コスモウォーターsmartプラス」で80~90度、「アクアクララ」で80~90度、「キララ」で83~93度などとなっている。カップや急須に注ぐと温度は少し下がるので、飲む段階では前述した温湯のレベルになると考えていい。お湯の温度についても、メーカーでそれぞれユーザーが使いやすい温度を考えて設定しているようだ。
「お湯」と「熱湯」の違いはどこにある?
そして、最高温度に関する表現が「熱湯」。グラグラ沸き立っている状態で、日清食品では「沸騰しているお湯」という言い方をしている。同社では即席めんを作るときは、この温度を推奨している。一方UCCでは、ペーパードリップでコーヒーをいれる場合に、熱湯からわずかに下がった92~96度を推奨している。
こうして見てくると、水は温度の状態によって実に多彩に表現されていることがわかる。料理やお茶をおいしくいれたり体調を効果的に整えたりするための、先人の知恵ともいえそうだ。
ところで「0度で凍り、100度で沸騰」というのは、1気圧の環境下でのこと。気圧が低くなる標高の高い山では、100度より低い温度で沸騰してしまう。となると、チベットやペルーのマチュピチュなどの高地では、ぬるま湯やお湯の概念は果たして変わってくるのだろうか…? 機会があったら調べてみたい。