コロナ禍の中で「水」についてはどんな対策がとられているか調べてみた!
日本では昔から水の安全性が追究されてきた。そのため、全国どこでも水道の蛇口から出た水をそのまま飲めたり、安心して生活用水として使えたりするわけだ。私たちの家庭に供給される水は、高度な処理技術と厳しいチェックによって成り立っている。そこで今回は、水道局など身の回りの水についての新型コロナウイルス対策について調べてみた。
◆早期に対策に乗り出したのは大阪
大都市で水道事故や災害による被害が発生すると、何万人という規模のライフラインが絶たれてしまう。水道水は飲むだけでなく、手や体を洗ったり食品や食器を洗浄したりと衛生状態を保つためにも必要で、不足すると伝染病などを拡大させることにつながりかねない。
今回、新型コロナ対策を早々に始めていたのは大阪市水道局だ。まだ国内ではそれほど危機感を持たれていなかった2020年1月29日の段階で「統括リスク管理会議」を設置。それから10日ほどで新型コロナやインフルエンザの各ウイルスに対抗するためのマニュアルなどを作り、2月20日には「新型コロナウイルス対策本部」まで立ち上げて、よりきめ細かい対応ができるようにした。
水自体は、浄水場内や市内にまで設置されている監視装置で、24時間休みなくウイルス混入の危険がないか水質チェックが行われている。そこに、これまでより強化したリスク管理を追加したのだ。とはいっても、新しい殺菌機器や薬品を導入したというわけではない。職員の手洗い・咳エチケットの徹底、テレワーク、時差勤務、オンライン会議など、人による感染の危険性の排除を徹底的に行ったのだ。たとえば、水と直接接触し飲料水を作る浄水場では、入場する人全員への検温で37.5度以上の発熱チェックなどの対策をとった。また委託業務の一時休止で、外的要因を減らす工夫も取り入れられた。その他、感染拡大期に必要な計画を各種立案したという。
わずかなリスクも防ぐことが大切
もちろん各地の水道局でも、上水道がウイルスに汚染されないための取り組みは行っている。東京都水道局によると、水道水は新型コロナウイルスの感染源となることは基本的にあり得ないという。同局のサイトには「コロナウイルスに分類されるウイルスに対しては、一般的に、塩素等による消毒の効果が高いため、適切に塩素消毒されている水道水が原因となって新型コロナウイルスに感染することはないと考えられる」と、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻・片山浩之教授の見解が記載されている。
上水道で殺菌に使われる塩素は、水道管を流れて来る間にも消滅することはなく、家庭の蛇口から水を飲むときにも残留塩素のニオイ、いわゆる「カルキ臭」がすることがあるためこれを気にする人もいるが、ウイルス対策にはしっかり役に立っているのだ。
また、水は生命維持の基本となるため、平時でも料金支払いが停滞したとしてもすぐには止められることはないが、このたびの感染拡大で特例の措置がとられているケースがある。東京都では、新型コロナウイルスの影響で収入が減った場合に、一時的に上下水道の支払い猶予の相談を受け付けている。もしそうした状況になったときは、地域の水道局で対応しているか確認してみるといいだろう。
◆ウォーターサーバー各社のコロナ対策
水道水は浄水場から水道管を伝って流れて来るが、もととなる水はもちろんのこと、ろ過や各種殺菌処理、塩素の投入などによって一定の安全性を維持して供給されている。一方、殺菌用の薬品を使っていない販売されているミネラルウォーターの場合は、製造段階で別の高いハードルを設けている。
ウォーターサーバーの例を見てみよう。ウォーターサーバー用の水は塩素のような薬剤を入れていないので、パッケージするまでに様々な厳密な基準が設けられている。採水した水を加熱や紫外線殺菌、RO膜という超高性能フィルターでのろ過などで、安全でクリーンな水として精製した後に専用の宅配ボトルに封入される。しかし、ここで外部から雑菌やゴミが入ってしまってはすべてが無駄になってしまう。これを防ぐため、人の手を介さず完全機械化してリスクを回避しているメーカーもある。だが、ウイルスはどこで付着してくるかわからない。
そこでこのコロナ禍の中、会社一丸となって、衛生面をさらに強化するウォーターサーバーメーカーが増えているようだ。たとえば「うるのん」や「ふじざくら命水(富士桜命水)」では、従業員の手洗いやアルコール消毒、マスク着用、咳エチケットを徹底する他、運送会社にもマスクが着用されているかの確認をとっている。また自社配送を行っている「アクアクララ」では、配達員である「アクアクララポーター」のマスク着用による安全性の確保や、直接対面せずにボトルを置いてくるといった柔軟なサービスを始めている。さらに「プレミアムウォーター」は、水の製造と直接関係ないコールセンターにも気を配り、オペレーターの座席間を開けて電話受け付けを行っているという。
配送時も安全性に配慮
大規模災害にかかわらず、今回のような世界的な災禍の際には、改めて食料や水といったライフラインの大切さに気づかされる。今後は常識になっていくであろう「withコロナ」の生活に備えて、各人が自らのライフスタイルを見つめ直す機会なのかもしれない。