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宇多田ヒカル「天然水」CM出演 キャスティングの思惑は?

6年ぶりのCM出演になる宇多田ヒカル

 約8年半ぶりとなるオリジナルアルバム『Fantome』を9月28日にリリースする宇多田ヒカル。音楽以外の活動も再開し、9月25日からは、自身が出演するサントリー食品インターナショナル『サントリー天然水』の新CMの放送も始まった。宇多田ヒカルがCMに出演するのは、2010年の『ペプシネックス』以来、実に6年ぶりとなる。

「水の山行ってきた南アルプス」篇と銘打たれた今回のCMは、南アルプスの北端に位置する甲斐駒ケ岳を登山する宇多田の様子を撮影したもの。『Fantome』に収録されている「道」という楽曲をバックに、ひとり登山道を行く宇多田の姿とともにさまざまな“つぶやき”が表示される。

コスモウォーター

甲斐駒ケ岳で行われたCM撮影

 撮影が行われたのは8月下旬のこと。標高2072メートルの北沢峠登山口から仙水峠(標高2264メートル)を経由して、栗沢山山頂(標高2714メートル)を目指すルートを選択。通常であれば2時間程度で到着するルートだったが、撮影をしながら登山ということで、4時間をかけて歩いたという。

 穏やかで神秘的な山の姿と、宇多田のさわやかで優しい歌声が融合する、荘厳な雰囲気すらただよう、この新CM。ミュージックビデオやCMを含めて、国内でのロケが初めてだったという宇多田は、CMのメイキングインタビューで、「こんなにハードな撮影はもしかしたら初めてだったかもしれないんですけど。自然の中でできたことがすごく気持ちよかったです」と、コメント。さらに、「登山も下山も、たぶんアラサーのインドア派のミュージシャンにしては上出来だったと思います」と、必ずしも自然に慣れ親しんでいるわけではないが、大きなトラブルもなく、撮影できたことを振り返った。

甲斐駒ケ岳で行われたCM撮影

 宇多田といえば、どちらかというとインドア派で、なんならオタクっぽいイメージ。自然の中を歩くCMに出演するような雰囲気ではないのはたしかだ。そういう意味では『サントリー天然水』のCMキャラクターとしては、意外な人選なのかもしれない。

 では、ほかのミネラルウォーターのCMでは、どうなのだろうか。やはりさわやかなタレントが出演しているのか。はたまた、宇多田のような変化球的人選も実は多いのか──。飲料各社のミネラルウォーターのCMタレントをピックアップしてみる。

ミネラルウォーターのCMに出演しているタレント

ミネラルウォーターのCMに出演しているタレント

 まずは、日本コカ・コーラの『い・ろ・は・す』。プレーンな天然水だけでなく、「愛媛県産みかん」「山梨県産もも」などのエキスが入った製品や、炭酸入りの「い・ろ・は・すサイダー」など、さまざまな種類があることでお馴染みの『い・ろ・は・す』だが、テレビCMに出演しているのは、俳優の阿部寛だ。白いシャツを着てさわやかな雰囲気を見せているものの、ほんのり無精ひげが生えた彫りの深い顔立ちを見ていると、少々渋めな人選といえそう。ただ単にさわやかさだけを求めたキャスティングではないことは、間違いなさそうだ。

 アサヒ飲料の『おいしい水プラス「カルピス」』のCMに出演するのは、歌舞伎役者の中村勘九郎だ。白いシャツに、白いパンツと白いベスト、そして葉っぱを模した緑色の蝶ネクタイという姿の勘九郎が、製品を説明し、グビッと飲むというシンプルな内容で、その衣装からもさわやかな雰囲気が伝わってくる。少なくとも阿部寛よりは、ストレートなさわやかさを感じるだろう。

 ダイドードリンコの『miu』のCMに出演するのは、女性ファッション誌『Ray』の専属モデルで女優の松井愛莉だ。阿部寛や中村勘九郎に比べるとぐっとさわやかなイメージ。アクアブルーのワンピースを着た松井が、浅瀬に立って「今日も一生懸命、頑張ってるあなたへ」というメッセージを読んで、『miu』を飲むというもので、ストレートに製品の清涼感をイメージさせる内容となっている。

 また、タレントではなく、アニメとコラボしたCMも。『サントリー天然水』は、大ヒット中のアニメ映画『君の名は。』とのコラボCMを制作。作品の主人公である三葉と瀧というふたりのキャラクターが、RADWIMPSの音楽に乗せて、アニメーションの中で『サントリー天然水』をさわやかに飲むという内容で、ディレクションは映画と同じく新海誠監督によるものだ。

 いずれのCMも、内容そのものはさわやかだが、キャスティングについてはバラエティー豊かになっている。宇多田ヒカル、阿部寛、中村勘九郎、松井愛莉、そして『君の名は。』…と、一見すると統一感がないようにも思えるが、どういうことなのだろうか。広告業界に詳しいジャーナリストがこう分析する。

キャスティングの思惑とは

キャスティングの思惑とは

「市販されているペットボトルのミネラルウォーターのメインの購買層は30代くらいだと言われています。日々の仕事の合間などに、水分やミネラルの補給のため、コンビニや駅の売店、自動販売機などで買う大人が多いというイメージですね。となると、自然と広告も30代くらいの人々にアピールする内容となるわけです」

 たとえば、宇多田ヒカルは現在33歳。30代の間では、同じ時間を過ごしてきたスターとして、身近に感じる人も多いだろう。そういう意味で、ミネラルウォーターのCMには最適だと言えそうだ。同様に、現在34歳の中村勘九郎も、働き盛りの30代男性の代表として、購買層と合致する。

 一方、松井愛莉は現在19歳であり、メイン購買層とは少々ギャップがあるが、CMの内容は若い松井が30代くらいの働く人々を応援するというもの。いわば、ミネラルウォーターを通して、日々の仕事の疲れを癒やしてくれるというわけだ。

「阿部寛さんは52歳で、30代からするとひとつ上の世代。CMのイメージとしては、“憧れの男性といっしょに頑張ろう”という感じだと思います。『君の名は。』については、30代はもちろん、さらに幅広い層へのアピールではないでしょうか」(前出ジャーナリスト)

 バラエティー豊かなミネラルウォーターのCMキャスティング。さわやかさはもちろんだが、それ以上に30代の働く人々に対してアピールできるかどうかが重要だと言えそうだ。また、目にする機会が増えてきた家庭用ウォーターサーバーのCM。こちらも需要が高まると同時に、どんなCMキャラクターが登場するのかも楽しみなところだ。

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