医療の現場が注目を集めるいま、そこで使われている「水」について調べてみた!
ここ最近はテレビもネットも、新型コロナウイルス関連の報道一色のため、全般的に医療情報に強い関心を持つ人が増えているのではないだろうか。それまであまり健康に気を使わなかった人でも、正しい手洗いの方法やマスクのつけ方に興味を持ったり最寄りの医療機関を調べたりするようになってきたのも事実だ。実際、最も身近な感染予防の手段として、流水による手洗いが注目されている。では、医療の現場では水はどんな形で使用されているのだろうか? また、普通の水とは違うのだろうか? 今回は、病院で使われる水についてレポートしていきたい。
◆身のまわりの水に関する基礎値知識
一般的な水のイメージは「無色透明・無味無臭」ではないだろうか。しかし、グラスに注いでよく見てみると気泡があったり、口にすると何らかの味やにおいを感じることもある。
例えば私たちに一番身近な水道水を考えてみよう。これは川やダムから取り入れた水を、浄水場でろ過、沈殿、塩素殺菌などの処理を施し安全な水を生成しているものだ。こうした処理によって、雑菌や砂、ゴミといった人体に有害なものは取り除かれるが、天然のミネラル分は残存している。東京都の水道水の場合、1リットル中に50~70ミリグラム程度のマグネシウムやカルシウムといったミネラルが含まれている。ミネラルには独特な渋みや苦みのような味があることがわかっており、これが「水の味」として認識されるケースが少なくない。
水のにおいに関しては塩素を投入することで、いわゆる「カルキ臭」が発生する。これは、心当たりのある人も多いのではないだろうか。また、夏場などはまれに、水道水からカビのような青臭いようなにおいがすることがある。塩素でも消しきれないこの臭気は、川やダムに生息する植物プランクトンが主な原因で、大量に発生したときに起こりやすい。におい物質は粒子が非常に細かく、すべてを除去することは難しいので、水そのものは安全であってもにおいだけ残ってしまうことがあるのだ。
天然の水にはミネラルなどさまざまな成分が溶け込んでいる
つまり私たちが日常的に接している水というのは、何らかの物質が含まれているのだ。先にあげたミネラルの味だが、これは適度に含まれることにより「おいしい水」になる。ウォーターサーバーに使われている水も、日本人になじみがあり、おいしいと感じられるミネラル量が考慮されている。ちなみに各社の1リットルあたりに含まれるミネラルの量を見てみると、「フレシャス富士」が21ミリグラム、「うるのん」が29ミリグラムなどだ。ミネラルは多すぎると水の味に与える影響が大きくなり、味覚に敏感な人だと300ミリグラム以上といったミネラル量の多い水を飲むと「味が濃い」「苦みがある」と感じることがある。
ミネラルは人体に有用な物質であるし、水道水の塩素も殺菌としては効果的だ。しかし、医療現場で使われる水も同じものでいいのだろうか?
◆細かく用途別に分けられている医療用水
薬品や医療用品の指針となる「日本薬局方」などを見ると、病院で使われる水にはさまざまな種類があることがわかる。
普通の水道水や井戸水は「常水」と呼ばれ、清掃や飲料水として使われる。これを蒸留したり非常に高性能のろ過器で「超ろ過」したものは「精製水」で、製剤原料などに用いられるが、消毒用の塩素などが除去されているため雑菌の繁殖に注意して使う。精製水をさらに処理した「滅菌精製水」は、点眼剤の調製などに使われる。そして、もっともデリケートな水といえるのが「注射用水」。常水や精製水を蒸留する、精製水を超ろ過するなどして作った水で、翌日までに使わないとならない。体内に直接入るものなので、条件が一番厳しくなって当然だろう。
私たちが日常触れている水には、各種のミネラルや、水道水の場合は塩素も入っている。飲料水としての安全性は確保されているが、治療薬や注射液にするには不要な成分のことがある。純度の高い水は、沸騰させたり簡易的な浄水器を通したりしただけでは作ることはできない。そこで医療機関専用の水の浄化装置が開発されている。
注射用の水は特にシビアな基準で生成される
例えば「三菱ケミカルアクア・ソリューションズ」では、精製水、注射用水、透析用水といった、治療に直接かかわる水の製造装置に加え、手術前に医師や看護師が手を洗うための水を製造する機械も製造している。この手術用手洗い装置では、「RO膜」を用いたろ過も使われている。RO膜とは、100万分の1ミリレベルの超微細なフィルターで水をろ過するもので、ウォーターサーバーでは「アクアクララ」や「アルピナウォーター」が水の浄化に採用している。
また、手術の際は外部の雑菌は命取りになるため、手洗い水が出てくる蛇口にはUV(紫外線)による殺菌装置も取り付けられている。紫外線による殺菌は、最近ウォーターサーバーでも使われるようになってきた機能だ。たとえば「フレシャスdewo mini」には、殺菌効果のある発光ダイオード「UV-LED」が搭載されていて、雑菌の繁殖を抑え安全な水をいつでも飲めるようにしている。
新型コロナウイルスの影響で、医療崩壊が日々深刻になりつつある日本の医療の現場ではあるが、水の使用に関するこうした細かい部分にも厳格な基準が設けられ、患者の健康に対して真摯に向き合っていることを決して忘れてはいけない。