【メーカーレポ】関西圏を中心に天然水の宅配を続けて15年、「ガロンウォーター」が支持される理由
ウォーターサーバーメーカーは全国的に幅広く展開していたとしても、その一方で創業した地域にしっかり根付き強みを持っている会社もある。大阪に本社を置く「ガロンウォーターサービス」も、そうしたメーカーの一つだ。少数精鋭で15年間、おいしく安全な水を届け続けてきた背景について取材してみた。
◆自らがおいしいと思った水への情熱
ガロンウォーターサービス代表取締役社長の中島和憲さんは、今から15年前に個人事業として水の宅配サービスを開始した。法人化したのは3年前のこと。
「私はアウトドアレジャーを楽しむことが多く、山のわき水っておいしいなと常々感じていました。これを大阪市内のような都会でも楽しんでもらえないだろうかと考えていたときに、ウォーターサーバーというツールがあることを知ったんです。ただ、当時はまだ法人利用が多く、一般ユーザーからは縁遠いイメージがありました」(中島さん、以下「」内は同)
この地域の水の宅配では最古参クラスだった「ガロンウォーターサービス」。ウォーターサーバー自体の認知度はまだまだ高くなかったが、それでもきっとクリーンで安全な水を欲しがる人はいると考えた中島さん。ときどき訪れていた群馬県の水を提供したいと、採水している企業を探した。そしてまず、同県で生産されている「箱島湧水」を取り扱うようになった。
「その後、長野県南部の木曽の水を素晴らしいと感じ、こちらの水も扱おうと思いたちました。採水地近くの山中にはワサビが自生しているんです。野生のワサビは、非常にキレイでミネラルバランスに優れた天然水が流れるところでしか育つことができません。それだけで、良質の水の産地であることがわかりました」
長野県の木曽地方では御嶽山などの名山が豊かな水を作り出す
水源の地下は古代の地層が重なっており、地上の森林と合わせると巨大なろ過装置のような働きで純水に近い良質な水になるという。ただ、採水元は安心できる会社に水を供給したいという。そこで何度も通い、誠意と理念を伝えた。
「ハードルはありましたが、大阪の都市部の方々においしい水を飲んでいただく体制が整っていきました。サービスを開始後、大阪ローカルの情報番組で取り上げられて、お客さんが爆発的に増えました」
この2つの水に絞り込んだ理由について、中島さんはくわしく解説する。
「箱島の水は、群馬県の名峰である榛名山からの水が『日本の名水100選』に登録されている点が大きかったですね。そして私は山の水の良さを感じていたので、できる限りもとの水に近い状態で届けたいと思っていました。地下水はいくらキレイといっても製品にするにあたり、殺菌処理をしないとなりません。高温で30分以上加熱する方法が一般的ですが、箱島の水は超高性能フィルターであるRO膜を通しています。また木曽の水は間接的瞬間殺菌」という、高温の殺菌法の一種を採用しています。牛乳などに使われている方式ですね。熱を加える時間が少ないほど、味が変わりにくいと考えて、この2つを選んだのです」
いずれも産地直送が可能なので、大阪だけでなく東京と神奈川にも届けることができる。ユーザーからの評価も高く、10年以上利用し続けている人や、一度解約したり乗り替えたりしても、再度使いたいと言ってくる人もいるという。
◆地域密着型にこだわる理由とは?
サービス開始当初、テレビ番組の効果もあって顧客が急増した「ガロンウォーター」だが、ある程度の顧客数になってからはその後、大きな変化は起こらなくなったという。
「関東圏での取り扱いもあるので市場をどんどん拡大するのもいいのですが、地元の大阪をベースに、近隣地域への訴求を強めていこうと考えました。そこで、告知方法を絞り込むことにしたんです。広告は大阪府以外に、兵庫県など関西エリアで発行されているミニコミ誌やフリーペーパー、自治体や団体の広報紙などをメインにしました。テレビメディアはドカンと大きい反応がありますが、意外と継続性がないことがあります。以来、ミニマム化しても、地域へのアピールを重視する方向に切り替えました」
丁寧な地域密着型の「ガロンウォーター」は小回りがきくため、ウォーターサーバーの契約に関してもユーザーが導入しやすいサービス体制を心がけている。
「KISO」にはペットボトルウォーターなどのバリエーションもある
「ウォーターサーバーの契約でありがちな、ノルマはありません。また、何年契約という縛りや途中解約の違約金なども設けていません。本当に欲しい方に理解していただけるよう、導入前の相談にも必要があればご自宅まで出向いて細かくお答えしています。その際、水道水は良くないとか、他社からの乗り替えをすすめることもありません。『強気に出てもうけるよりも、もうからなくてもキチンと商売したい』というのが、私のモットーなんです」
一つ一つ丁寧な仕事をしたいと言う中島さん。その考え方はアフターケアにも及んでいて、設置後に何かトラブルがあったときにはすぐに駆け付けられる体制を整えている。関東圏の場合は、提携している企業が対応する。
「できるだけ、実際にウォーターサーバーを使われるお客さんの顔を見ることが大切だと思っています。水のメーカーさんが値上げしたりボトルをリターナブル(ボトルを回収する)方式からワンウェイ(使い捨て)方式に変えたりしたとき、その影響を受けることがあります。でも、お客さんの混乱を回避するためには、日ごろからのお付き合いで安心感を提供しておくことが大切だと思っています」
都市部に住む人たちに自然のおいしい水を届けたいという思いを誠実に実行していることが、「ガロンウォーターサービス」の最大の特色といえるかもしれない。