【メーカーレポ】伊勢神宮に守られた日本一の清流からの恵み──「アクアセレクト」の水の秘密
「厳選された水」という意味を持つ、ウォーターサーバーブランド「アクアセレクト」。安全でおいしい水を提供し続けて、今年で15年になる。ほかのメーカーにはない、伊勢神宮にも近い三重県の山中の採水地から水をくみ上げているのが特色だ。「アクアセレクト」のウォーターサーバーと水は、果たして何が違うのか?──メーカーを訪ねてみた。
◆伊勢神宮に守られた大自然の水
水を製品化する場合、当然のことながら「いい水」を見つける必要がある。しかし同社がウォーターサーバー事業を始めるにあたり、最初はまったく見当がついていなかったという。「株式会社ビューティフルライフ」アクア事業部ジェネラルマネージャーの竹本大輔さんはこう話す。
「会社の本体はもともと、各種の教室を展開したり、そこで使う教材を作ったりしている会社でした。飲料水の販売とは無縁と言っていいほどです。水がいいことで知られる富士山麓で井戸を掘ろうという意見もありましたが、各地の水を取り寄せて、社員が水のテイスティングをすることになりました。その中で『おいしい』という意見が多いものに決めようと考えたのです。何十種類もの水を比較する中で、ある日、社員全員が『おいしい!』と評価した水があったんです。それが三重県大台町の水でした」(竹本さん、以下「」内は同)
特に味覚が鋭い人がそろっていたわけではなかったが、営業担当者たちは全国各地の水を飲んできた経験がある。それをもとに考えても、大台町の水はおいしかったそうだ。この地域の水の硬度は約30ミリグラム。硬度とは水1リットル中に含まれるミネラルの量で決まる。一般的に硬度が低いと、まろやかな味になることが知られている。また、含有ミネラルのバランスによって、水の味にも微妙に違いが出てくる。
「これなら多くの人に受け入れられるだろうと考え、早速、水の販売元にコンタクトを取りました。すると大台町の会社でも、水を売りたいと考えていたことがわかりました。同町を流れる『宮川』は、伊勢神宮の横を通り伊勢湾に到達するのですが、国土交通省の一級河川調査で、災害に見舞われた2005年を除いて、2003年から2018年まで連続して日本一の清流に選ばれるほど、キレイな水が流れているんです。その上流域のさらに清らかな湧き水を、町の特産品にしていたんですね」
国土交通省では水の汚れを示す基準の一つであるBOD(生物化学的酸素要求量)を用いて算出しているため、宮川の水がいかに澄んでいるかは科学的にも証明されているのだ。
「アクアセレクト」の水源は、日本一の清流にも選ばれた宮川上流の湧水
大台町は、かつては林業で栄え人口も多かった。しかし、1980年代から木材需要が減少し、産業が衰退してしまった。観光に目を向けても、地域的に伊勢観光の立ち寄り先にはなりにくいという問題があった。町に残された資産は大自然に育まれた良質の水だが、販路の確保に苦労していたとのこと。
「おいしい水を探していて『この水が欲しい!』と思った弊社が、水を売りたい方のニーズとマッチしたんです。奇跡のような出会いをしたわけです。水源となる地域の水をさらにくわしく調べてみると、国交省の調査地点のはるか上流なので水がさらにキレイなこと、毎年台風が通過することや黒潮の影響で雨がよく降るため水量に不安がないこと、急しゅんな地形に加え、伊勢神宮の『宮域林(ぐういきりん)』であり、開発の恐れがないというメリットも見つかりました」
伊勢神宮の背後に控える山々は伊勢神宮と縁の深い地域で、社殿の修繕のために使われる杉やヒノキなども植えられている。「神様の持ち物」のような場所ということで、工場やゴルフ場で切り拓いていくことは考えにくい、いわば「アンタッチャブル」な聖域だ。将来的にも自然が残されていくと考えられている。
「水を売るからには、おいしさだけでなく安全性が非常に重要です。これからも周辺地域が保護されていく状況にあるというのは、安定して良質の水をお届けできるということになります」
くみ上げられた水は、国内外で高い評価を得ている「シブヤマシナリー」製の、ろ過・殺菌・ボトリングなどを行うシステムによって製品化されている。水質管理やボトルの成型など、町で可能なことはすべて現地でまかなっていることが、業界最安値クラスの天然水の低価格化につながっている。
また、同社ではサーバー本体にもこだわりがある。
「本体の上から差し込む形では、天井が低い場所での使い勝手が悪くなることに気づきました。そこで、水パックを滑り込ませるように入れられるタイプのサーバーを開発したんです。この給水方法は特許を取得しています。また、お部屋に合わせて4色のカラーも用意しております」
「アクアセレクト」の水はモンドセレクションで、2013~2016年まで4年連続「優秀品質金賞」を受賞し、2017~2018年には「優秀品質最高金賞」を連続で受賞している。
◆水の地元とユーザーとのつながり
水を守るため、同社では宮川上流の環境保全に対する活動も行っている。支流も含めた河川の清掃はもちろんだが、特に植林を強化しているとのこと。
「コナラやイロハカエデなど、地域に昔から生えていた広葉樹を植えています。木材用として植林された杉やヒノキは『浅根性(せんこんせい)』といって、根の張り方が浅く、斜面が崩落しやすい欠点があるんです。崖のような斜面をよじ登って、下草刈りをしてから植えていくのはなかなか大変ですが、未来に宮川の水を残していくことは大きな意義があると思っています」
同社が、自然と人との共存のために行っているイベントも特長的だ。
「ウォーターサーバー事業を開始してからほどなく、お客様から『水道水を浄化して作っているのでは?』という声もいただいたんです。そこで採水地を見に行くツアーを募ったら、20人の参加者が集まりました。見学だけでなく、川で泳いだり魚を捕まえたりといったレジャーも楽しんでいただきました。その結果、現地の山林や水と直接触れあえて、皆さん大変喜んでいただけました」
ユーザーからの疑問から始まったこの催しは、その後「田んぼオーナープロジェクト」や「夏休み宿題合宿」など、さまざまな広がりを見せていく。
「田んぼオーナー制」など、採水地で水と触れるイベントが豊富なのも特長
「水田のオーナーとなることで、良質の水で育ったお米を秋に食べられるという制度なんです。管理は地元の人や我々が行い、オーナー様は時々様子を見に行ったりするだけでいいのですが、募集と同時に完売して驚きました。『宿題合宿』は塾の先生も同行し、現地の廃校となった小学校をリフォームした施設で、お子さんたちが集中して宿題を行う試みです。地元の人たちは『稲穂が実る風景がまた見られるとは思わなかった』『学校から子どもたちの声が聞こえてくるのはいいものだ』と、話しています」
地域の活性化にも一役買っているほか、現地を訪れるユーザーにしても、採水地を知るだけでなく「生産者の顔が見える」ことは、安心と信頼につながる。独自の採水地から安全でおいしい水を届ける「アクアセレクト」の事業の背景には、人と環境との深いつながりがあった。