コロナ禍の続く今だからこそ水と触れ合える近場のレジャースポットに注目！【大阪編】

　新型コロナウイルス拡散防止のために、この夏は住んでいる都道府県からの越境を自粛している人も少なくない。他の地域に迷惑をかけたくないということで、レジャーに出かけるとしてもなるべく近場を選ぶケースも増えているだろう。今回は【東京編】に引き続き大阪で、水にまつわるお出かけスポットを探してみることにしよう。

◆「名水百選」に選ばれたわき水

　東京に次ぐ大都市の大阪府でも、新型コロナウイルスの感染者が再び増加中だ。府内の各自治体ではそれぞれ独自に対策強化を進める動きも出てきている。とにかく感染リスクを下げ、拡散しないようにすることが急務。その一つとして考えられているのが、遠距離の移動や県境を越えての不要不急の外出を控えること。

　しかしそうはいっても、息抜きのために少々のお出かけもしたい。特に最近はテレワークの普及で、平日も休日も関係なく自宅にいる時間が増えている人も多い。ではどこに出かけるか…？　テーマパークや映画館もいいが、収容人数の制限がある。そこで、近場の癒しのスポットを訪れてみてはいかがだろうか。まだまだ暑い時期でもあるし、涼感も味わえる清らかな水の流れるところがオススメだ。

　名水と聞くと、山や森林に囲まれ渓流や滝などのある大自然の真っただ中のようなイメージがある。例えばウォーターサーバーの採水地で見てみると、「コスモウォーター」「プレミアムウォーター」「フレシャス」などは富士山周辺、「アルピナウォーター」は北アルプス、「サントリー南アルプス天然水」はその名の通り南アルプス、「日田天領水」は大分県の日田地域の山の中。しかし地図を見ても、大阪府には高山や広い森林のような場所があるようには思えない。

　ところがそんな大阪にも、環境庁（現・環境省）が選出した「昭和の名水百選」に選ばれた水がある。それは「離宮の水」というもので、大阪府の北部、京都府との境に位置する島本町にある「水無瀬（みなせ）神宮」の中にわき出ている水だ。同町によると、連日この水を求めて自前のボトルを持って参詣する人が絶えないとか。水温は四季を通じて15～20度程度と一定であるため、夏は冷たく感じ、冬はほんのり温かみを感じるようだ。

　この神社の歴史は古く、鎌倉時代に後鳥羽天皇、土御門天皇、順徳天皇を弔うために建てられた。したがって祭神はこの3人の天皇である。境内の建築物は重要文化財や町の指定文化財として登録されている。離宮の水がある手水舎も、登録文化財の一つだ。市街地から遠く離れていることもあり、荘厳で静かなたたずまいである。環境省の名水百選によると、この水は古くから茶の湯や書道にも広く使われてきたという。

神聖な水は書道にも使われてきた

◆大阪市の水道水の倍のミネラル分

　実は由来だけでなく、この水自体にも特長がある。それは硬度が87ミリグラムということだ。硬度とは、水1リットルに含まれるマグネシウムやカルシウムをはじめとするミネラルの量によって決められるもので、数値が大きいものを硬水、小さいものを軟水という。世界保健機関（WHO）の基準では120ミリグラム以上が硬水だ。これを元に考えると、「離宮の水」は軟水の中でも硬水に近い。

　水の硬度は、地下水が流れている場所の地層や岩盤に左右される。周囲にミネラルの多い岩石があれば、当然硬度は高くなる。日本国内では、ほとんどの地域で硬度の低めの軟水が産出される。ウォーターサーバーに使われている天然水を例に取ってみよう。「ふじざくら命水」は31ミリグラム、「うるのん」は29ミリグラム、「キララ」は28ミリグラムといったところだ。ちなみに淀川を水源とする大阪市の水道水の硬度は40～50ミリグラムで、「離宮の水」と比較するとかなり低い。

　水の中のミネラル分が増えると、味わいに変化が表れることがある。ミネラルには渋みや苦みに似た特有の味があり、これが水の味に微妙な変化をもたらすのだ。敏感な味覚を持つ人の場合、高めの硬度を持つ水のことを「味がしっかりしている」などと評することがある。そこで、硬度が非常に低い天然水や大阪市の水道水と、「離宮の水」とを飲み比べて「利き水」をしてみるのも楽しいかもしれない。

パワースポットの水で厄災も回避したいもの

「離宮の水」は同町の保存会によって大切に守られており、持ち帰りの際の注意についても町では呼びかけている。大きめのボトルを持って行くことはかまわないが、1回につき、くめる量は最大20リットル。それ以上欲しい場合は、列に並び直す。また、竹筒から出ている水は参拝用の手水であるため、そこからの取水や容器の洗浄は厳禁だ。

　水無瀬神宮のご祈祷には、厄除、家内安全、身体健康、病気平癒などもある。参拝の折には、パワースポットの水をいただくと同時に、コロナ禍を無事に乗り切れることを祈ってきてはいかがだろうか。