鎌倉市と「ウォータースタンド」が協定を締結──プラスチックごみ削減への理念とは?
日本の水道水は、世界でも類を見ないほど厳格な基準で生成されている。そして、それを利用した水道直結式のウォーターサーバーも最近話題となっている。このほど、水道水から高性能の浄水システムでおいしい水を作り出す機器のレンタル事業を行う「ウォータースタンド」が、ごみの削減問題で神奈川県鎌倉市と協定を結んだという。エコに対するその取り組みとは?
◆水道に直結して使うサーバー
日本という国で暮らしていると日常あまり気にかけていないかもしれないが、安全でおいしい水がいつでも飲めることは、とても恵まれている生活といえるだろう。それはなにより、厳しい基準をクリアした上水道が全国的に配備されていることが大きいが、その一方で市販のペットボトルウォーターやウォーターサーバーなどのサービスも拡大してきた。「ウォータースタンド」も、その1つ。
一般的なウォーターサーバーとの違いは、宅配水ではなく「水道水」を利用することだ。水道の水栓や給水管のつなぎ部分などから水を分岐させて機器を直結し、水道水をろ過するという方法を採用している。水道水のろ過というと、蛇口に取り付けるコンパクトな浄水器を思い浮かべる人は多いと思うが、「ウォータースタンド」はそのサイズもメカニズムも全く違う。
主にキッチンのシンク横などに置く使い方をするため、卓上型ウォーターサーバー程度の大きさ。この中に高性能のフィルター機能が入っている。「ウォータースタンド」の場合、機種により二通りの浄水方法があり、1つは不純物質は取り除くがミネラルは残す「ナノトラップフィルター」。静電気の力で不純物を吸着し、ウイルスのような小さなものまで除去できる。もう1つは「ROフィルター」。これは海水を真水にできるほどの超高性能フィルターで、ほぼ純水を生成できる。一部の放射性物質までフィルタリングしてしまうというから、そのろ過能力の高さがうかがい知れるだろう。
また、「ウォータースタンド」の特長として「ボトルを使わない」という点がある。一般的なウォーターサーバーの場合、数リットル~10数リットル入りの水ボトルを配達してもらう必要がある。しかし「ウォータースタンド」の場合は水道を利用しているので、交換用の水ボトルがいらないのだ。その分、資源や廃棄物についての省力化にもつながっている。
そうした「ウォータースタンド」を扱う「ウォータースタンド株式会社」が、先日、鎌倉市と、「かまくらプラごみゼロ宣言にかかる連携と協力に関する協定」を締結した。これは、年間2000万人もの観光客が訪れる鎌倉市内で、マイボトル用の給水スポットを整備して、市民や観光客にもマイボトルの活用を呼びかけようというもの。これにより、プラスチックごみの削減に貢献できるのではと考えているという。
「ウォータースタンド」では交換用水ボトルがいらない ※画像はニュースリリースから(以下同)
◆行政が率先してマイボトルを推奨
近年、ペットボトルやビニールといった、自然分解されないプラスチックのごみが問題となっている。生物が誤って食べてしまった場合、消化も排泄もされないので食物を摂取することができず死んでしまうこともある。小さな魚がプラスチックを飲み込み、それを大型の捕食者が食べた場合も、結局ごみの部分は体内に残る。
そうしたプラスチックごみには家電の外装パーツやポリタンクのような大きなものもあるが、直径5ミリ以下に小さく砕かれたマイクロプラスチックも懸念されている。小さいため、人間も知らずに飲み込んでいる可能性がある。この影響については未知数だが、各国で研究が進んでいるところだ。
鎌倉市では2018年夏、同市の由比ガ浜海岸に漂着したクジラの赤ちゃんの胃から、プラスチックごみが発見された。このニュースは、プラスチックごみによる環境破壊への警鐘の1つとなった。
同市ではこの年の10月「かまくらプラごみゼロ宣言」を表明し、その実現に向けてマイボトル利用の啓発を始め、市役所内でペットボトルを販売しないことや利用しないことを呼びかけてきた。また、「ウォータースタンド」を給水スポットとすることで、こうした取り組みが強化されると考えられている。同市の松尾崇市長は今回の協定について、こうコメントしている。
「ウォータースタンド」を試用する松尾崇鎌倉市長(左)
「鎌倉市は環境負荷の少ない『循環型社会』を形成するため、市民、事業者、行政が連携・協働して3R(削減、再利用、リサイクル)を推進し、『ゼロ・ウェイストかまくら』の実現を目指しております。市内の公共施設等に給水スポットとして設置することで、マイボトルの普及をより一層促進し、プラごみゼロに向けて取組を進めて参ります。市民や観光客の皆様もマイボトルをお持ちいただき、プラスチック容器の削減にご協力をお願いします」
「ゼロ・ウェイスト」とは、無駄や廃棄物をゼロにするという意味だ。一朝一夕に実現できるものではないが、環境浄化を推進する自治体のモデルケースのヒントとなるかもしれない。
宅配水型のウォーターサーバー各社も、プラスチックごみの削減やリサイクル、ボトルに使用する新しい素材の開発などを進めている。水は生命を維持するために不可欠な要素。そして地球環境に直接関係するものでもあるので、飲料水に携わる企業はさまざまな形で取り組みを行っているのだ。