「日本宅配水&サーバー協会」に聞く<その2>──ウォーターサーバーの未来予想図
「日本宅配水&サーバー協会」は、消費者からの相談窓口のほか、宅配水業界内のルール作りやウォーターサーバーに関する啓発など、さまざまな活動を行っている。ウォーターサーバー本体や機器的な部分についての検証やガイドラインの策定も、担う仕事の一つだ。そこで今回は、サーバー周りに関する最近の動向について話をうかがった。
◆安全性をより高めるための施策とは?
ウォーターサーバーの最新トピックスについてお答えいただいたのは、日本宅配水&サーバー協会事務局長の芹澤卓道さん。
「ウォーターサーバーを新規導入されるのは、20~40代のヤングファミリー層が多いようで、その年代で実際に使われている方も増えています。結婚や出産を機に導入されるケースも少なくありません。そこで重視されるのが安全性です」(芹澤さん、以下「」内は同)
ウォーターサーバーは、コックを開けるだけで冷水も熱湯もすぐに出せることが魅力だが、子どもがいたずらで熱湯を出して火傷をするようなことがあっては困る。そこで考えられたのが、簡単に開けることを防ぐ「チャイルドロック」の機能だ。
「一般的にチャイルドロックは、単純な操作では解除できない『2段階』や『2重』の仕掛けを持っています。あるボタンを押してからコックを開けるとか、ボタンを押しながらでないと水が出せないなどですね。ただ、子どもさんがやすやすと扱える単純なものだと、仕掛けを施していても開けられてしまいます。そこで、チャイルドロック機構を押したり回したりする力を業界内で統一できるよう数値化し、基準としたんです」
メーカーによって力の加減がまちまちだと、A社のロックは解けなくても、B社のロックは外せてしまう…といったことが起こりうる。安全性を高めるために、子どもの年齢と知能、力の強さなどを研究し、統一基準を策定したという。
ウォーターサーバーはヤングファミリー層に人気
「そこで、火傷事故が比較的多い1歳以下のお子さんを想定し、対象年齢を設定しました。国や専門家の意見もうかがって、この年代でロックを解きにくい重さと構造を基準とすることになりました」
押しながら回すなどの機械的なロックの安全性は、これによりさらに確保された。しかし最近のウォーターサーバーには、電子ボタン式のタイプもある。
「これにも小さいお子さんの特性を把握して、ハードルを設けました。それは例えば『電子式のウォーターサーバーはロック解除には3秒以上、ボタンを押し続ける』というものです。その根拠は、1歳以下のお子さんのほとんどは、3秒以上ボタンを押すという行動ができないからです。こうした基準を作ったことで、さらに安心して使っていただけるウォーターサーバーに変わってきていると思います」
ちなみに、こうした基準を満たしている機種については、協会のサイトで確認できる。
◆環境問題への取り組み
また、これからのウォーターサーバー市場において無視できないものの一つが「エコ」だと、芹澤さん。
「身近なところでは、ゴミの問題です。ウォーターサーバーの場合、日常的に廃棄されるものとしては『水ボトル』があります。主に使われている素材は、ペットボトル、ビニール、ポリカーボネートです。ペットボトルは各自治体の廃棄方法に則ってリサイクルされます。ビニールも各自治体の廃棄方法に則って捨てられます。ポリカーボネートの場合は、回収して洗浄殺菌後、再利用いたします」
各メーカーの廃棄基準を超えたポリカーボネートは「ペレット化」といって、細かく砕いて粒のようにし、それを溶かして新たな製品に作り替えられる。再生容器のこともあれば、ボールペンや衣服などにリサイクルされることもある。
「ペレットにする容器が汚れていると、リサイクル業者によっては受け入れてもらえないことがあります。ただ、ウォーターサーバーの場合は水しか入っていないので、コーヒーやジュースの容器よりも洗浄しやすいことは利点です」
ゴミ問題の解決のために、自然に還る「生分解性プラスチック」の利用も視野に入れているが、数年で完全に分解されるプラスチックは実用化されておらず、今後、研究が進むことを期待していると芹澤さんは話す。
さらに、地球規模で考えなければならない問題もある。
「ウォーターサーバーの冷水を作る冷却装置には、代替フロンガスが使われています。現在これをノンフロンガスに替えることも検討しています。その理由は、地球温暖化にフロンガスが関係していると考えられるからです。そこで現在、ウォーターサーバーの冷媒の主流となっている『HFC』という代替フロンガスから『R600a』というノンフロンガスに転換するか検討しています」
協会では地球温暖化防止のための呼びかけも行っている
この新しいノンフロンガスを使用している冷媒は「グリーン冷媒」とも呼ばれ、温暖化に強い影響を与えない性質のもの。家庭用の冷蔵庫は2000年前後からグリーン冷媒化している。また、ヨーロッパ諸国でも広く採用されるようになってきたという。
「ならば、いま市場に出ているサーバーの冷却装置をグリーン冷媒に変えたらいいかというと、ことはそう単純ではありません。コンプレッサーなどの基本となる部品から変えないとならないのです。手間もコストもかかりますが、5年後には自動車のエアコンも新車からグリーン冷媒対応になるので、国の動向や社会情勢を見ながらウォーターサーバーの冷媒も検討していくことになるでしょう」
ウォーターサーバーは「クリーンで安全でおいしい水」がいつでも飲めるということが、大きな特長だ。その水を、地下水や伏流水など、自然界から採取している企業も多い。地上に降った雨は、数十年という年月をかけて地下水となる。将来的に安全な水を確保し続けるために、協会加盟各社一丸となって環境問題に取り組んでいるのが現状のようだ。
日本宅配水&サーバー協会