「日本宅配水&サーバー協会」に聞く<その1>──ウォーターサーバー業界最新事情
ウォーターサーバー市場は、従来の水専業のメーカーだけでなく新規事業として参入する企業も増え、水質、価格、機能、デザイン…など、ユーザーの選択肢の幅は年々広がっている。成熟してきた感のあるウォーターサーバー業界だが、マーケットの動向や最新トピックについて、業界団体のトップに話を聞いた。
◆水の配送コストが高騰?
今回、当サイトのインタビューに答えてくれたのは「日本宅配水&サーバー協会」事務局長の芹澤卓道さん。
「日本でウォーターサーバーを使っている人は現在、人口の6%前後。ここ数年で特に成長を遂げ、新規に参入する企業も増えてきました。今後も急増とは言えないまでも、安定した市場を確保していくと思います。ただ拡大とともに、いくつかの課題が出てきました。特に解決が急がれているのが『配送コスト』なんです」(芹澤さん、以下「」内は同)
配送コストに影響を与えていることの一つが、ボトルの形式だという。ウォーターサーバーのボトルには、大別して「ワンウェイ方式」と「リターナブル方式」という2種類がある。ワンウェイ方式は、ボトルの水が空になったら各家庭で捨ててしまえる。一方、リターナブル方式は、空になったボトルを業者が回収してリサイクルする。これが、なぜ配送コストに関係してくるのだろう?
「リターナブル方式のボトルの多くは、回収の必要があるので自社製造・自社配送を行っており、ある程度のインフラが必要となります。対するワンウェイ方式のボトルの多くはOEM(他社ブランドの製品製造)で供給されるため保管スペースも少なくてすみ、配送は宅配便に任せ回収不要ということもあって、低コストでウォーターサーバー事業を始められるというメリットがあります。廃業するときも先行投資コストが少ないため、ローリスク。そのため、この3年以内に開業したウォーターサーバーメーカーは、ワンウェイ方式の方が多いようです。そうすると、宅配便で扱う水ボトルの量も増加します。水は重いことやかさばることで、実は宅配便事業者にあまり歓迎されない荷物の一つなんです」
ウォーターサーバーの水のボトルは小さいものでも7リットル程度。10リットルを超える容量も少なくない。水は1リットルあたり約1キロ。12リットル入りともなると相当の重さになる。また、水は常温では体積を変えることもできない。
「配達員の方の体力的負担も大きくなります。そこで宅配業者は、水に関しては料金を高く設定することになります。すると、水そのものは低価格でも、配送コストがユーザーの家計を圧迫することになってしまいます。商品販売価格(水)が1000円、配送に1000円のようなことが実際に起こっているのです」
水の配送は宅配便業者にとって負担が大きい
「水の配送はお断り」という宅配便業者が現れてくる可能性もある。とはいえワンウェイ方式は、ユーザーにとっても便利な点がある。では、現状を改善する方策はあるのだろうか?
「水のボトルを一時的に集積しておける倉庫などの拠点づくりを、複数の企業が共同で行おうかという動きはあります。拠点がいくつかあれば、配送のコストが下げられるとの考え方からです。ただ、そうした場所をどこに置くのがベストなのか、維持管理はどうするのかなど、各社の足並みがそろうまでハードルがいくつかあるようです」
配送については、トラックの往路は水ボトルを積載し、帰路は拠点方面に運ぶ何らかの荷物を請け負うことで、コストを少しでも安くできるような方法も考えられているとのこと。
お金の面でもう一つ気になるのは、消費税率の引き上げだ。ウォーターサーバーはどうなるのだろうか?
「実は数年前から、国税庁や税金の専門家らと話し合う機会を設け、消費税対策についても考えてきました。その結果、ウォーターサーバーに使われる水は『飲料水』の扱いになるので、8%の軽減税率を適用。サーバーのレンタル料金やメンテナンスは10%になります。どの部分の税率が変わるかの詳細は、各企業に問い合わせるといいでしょう」
◆ウォーターサーバー業界の今後の課題とは?
業界を取り巻く課題で、無視できないものがもう一つあると、芹澤さんは話す。
「メーカーが直接かかわっていない広告で、ここ最近は表現が過激になってきているものを見かけるようになりました。客観的なデータに基づいて書かれていないと、ユーザーを混乱させることになりますから。例えば、何の裏付けもなく『電気代月々300円!』などと記載しているものも見ました。当協会では、電気代の算出法のガイドラインを出しており、メーカーはそれに即した方法で算出しています」
広告を見て、数値や解説文に疑問が浮かぶような場合は、メーカーの公式サイトを参照するといいだろう。
過激な表現はユーザーの混乱も招く
「だいぶ以前のことになりますが、業界内でも他社の足を引っ張るような広告合戦が展開されたことがあったり、強引なセールスが行われたことがあったりしました。しかし現在では事業者間で情報を共有したり、コミュニケーションを取れる委員会などを立ち上げたりして、業界全体を健全に活性化していこうという動きになっています」
消費者が安心して水を口にすることができるよう、協会加盟各社が一丸となって自浄努力を行っているのが現状のようだ。
次回は、ウォーターサーバー本体に関するトレンドについて、芹澤さんのお話をお届けする。
日本宅配水&サーバー協会