ウォーターサーバーの水としても使われる地下水が「枯れる日はくるのか?」問題を検証
日本は、蛇口をひねるとそのまま飲んだり顔を洗ったりできるほど上水道が整備された国のひとつだ。古くは中世以前から水道を引いてきた歴史もある。飲用、料理、洗濯、風呂…と毎日気兼ねなく水を使うことができるのは、実は幸せなことと言えるのかもしれない。ちなみにウォーターサーバーの水は、山奥などのクリーンな環境にある地下深くから採取されているケースが多い。その地下水はそう簡単に枯れることはないとされているが、実際のところどうなのだろうか? 最近の研究などをベースに調べてみた。
◆浅い井戸は雨量によって枯渇することも?
地下を流れている水をくみ上げるのが「井戸」。昔の家庭の庭先に掘ってあったようなタイプは「浅井戸」、地面を数十メートル以上も掘り下げてくみ上げるのは「深井戸」といった呼び方をする。
地下数メートル程度までの一般家庭が使うような浅井戸は、実は枯れることは珍しくないようだ。公益社団法人「日本地下水学会」の説明によると、井戸から水が出なくなる主な原因は2つ考えられるという。ひとつは水をくみ上げている場所の地下水位の低下で、もうひとつは井戸そのものに問題が起こった場合。
原因の見分け方は、隣近所など周辺地域の井戸も同様に枯れている場合は地下の水位低下、自分の家だけで起こっているなら個別の井戸にトラブルが起こっていると考えることができるとのこと。
浅井戸では降水量の減少でも地下水位の低下が起こる。民話などで日照りのため井戸が空になるような描写があるが、これが実際にも起こり得るのだ。自宅の井戸水だけ出ないときは、単にポンプが壊れている可能性もある。また、近隣で掘削工事をしていて地下水の流れを変えてしまったときも、井戸の枯れが起こる。いずれも雨が降るとか故障を直すとか工事が終わるとか、復旧の道筋は比較的見えやすい。
日本は水のインフラに恵まれてきた
◆地下深くの水が枯れるとしたら…?
対照的に、地下深くを流れている地下水は外部からの影響を簡単に受けることは、基本的には起こらない。そうした地層を流れている水は、ちょっと降った雨が浸み込んだものではなく、何年、何十年という歳月をかけて地表から到達したものだからだ。降水量不足でもすぐに枯れたりはしないし、そこまで深い場所で工事が行われることもあまりないので安定供給ができるというわけだ。しかも何層にもわたる分厚い地層を通過していっているため、雨に含まれている不純物なども丁寧にろ過され、地中のミネラルを含んだ水となる。また、酸性雨の濃度を和らげていく機能があることも、研究によってわかっている。
深井戸は地下30メートル前後のものを指すことが一般的だが、ウォーターサーバーの水となるとさらに深くから採水されているケースが少なくない。例えば「フレシャス富士」の採水地は、富士山の標高1000メートルの地点を273メートル掘り下げた場所、「クリクラミオ 富士山の天然水」も同じくらいの標高から253メートルの地下。「プレミアムウォーター」の島根県浜田市金城町にある井戸は、700メートルもの深さ。大分県の「日田天領水」はなんと1000メートルである。「超深井戸」と命名したくなるほどの深さだ。これだけ深ければ水質が安全なだけでなく、採水環境自体が安全・安定していると言えるだろう。
しかし、深井戸の水でも被害を受けることがある。それは大規模な地震だ。実際に2016年4月に起こった熊本地震では、地下水が枯渇する被害も発生している。最大マグニチュード7.3、最大震度7を記録した強い地震のため地下水の流れが変わり、温泉が出なくなるという現象まで起こった。これにより観光産業は二重三重にダメージを受けることになってしまった。
阿蘇山は良質の水を生み出すが、火山活動にも注目が集まっている
阿蘇山系は豊かでキレイな水が地下を流れていることで知られているが、一部の地域では地震の影響でそれが途絶えてしまったのだ。名水が豊富に流れ込むことで知られる熊本市の水前寺公園の池も干上がった。2011年の東日本大震災でも、地下水への影響を受けた場所はあったが、熊本地震のケースでは地層の変化がより大きかったと、気象庁はじめ専門家らは分析している。
ウォーターサーバーの採水地点での水の枯渇も心配されたが、「プレミアムウォーター」も「日田天領水」も、工場や配送関係には被害があったものの、肝心の井戸は無事だった。また同地域の地下深くに採水地を持つ「サントリー」も無事との報告を行っている。地下数百メートルのレベルになると、やはりそう簡単に地下水脈が破壊されることはないのだろう。
ここ最近も、東北や北陸、千葉県などで揺れの大きな地震が発生した。国土は小さいながら大小の活断層が各地を走り、活発な火山を多く抱えている日本。深い場所を流れる地下水の動向にも注意が必要だ。
ウォーターサーバーはメーカーによっては、採水地をエリアの違ういくつかの地点に設けていたり、工場の耐震対策を強化したりしている。現在のところ、地形が変わるほどの大地震でも起こらない限り、地下を流れる水が途絶えてしまうことはなさそうだ。また、水道にしろミネラルウォーターにしろ、日本は水インフラの復旧は最速で進められることが多い。
ちなみにウォーターサーバーの水は、災害時に非常用水としても活用できるため、ボトルがすべて空になってからオーダーするのではなく、常に1~2本は備蓄水としてキープしておくことがオススメである。