東日本大震災から8年──災害とウォーターサーバーについて改めて考える
3月は日本人にとって、いや世界的にも忘れることができない日がある。それは2011年3月11日に起こった東日本大震災だ。津波やがけ崩れ、家屋の倒壊などの直接的な被害を受けなかった地域でも、電気や水、交通が止まるといったライフラインへのダメージがあり、災害への認識を新たにした人も多かったようだ。特に水は生きていくうえで不可欠。そこで今回は、東日本大震災後にウォーターサーバーを導入した首都圏のユーザーに、飲料水と災害について思うところを聞いてみた。
◆水道が止まったことをきっかけに…
ウォーターサーバーの需要は年々増加しているが、2011年は特に飛躍的に伸びた。「日本宅配水&サーバー協会」の資料によると、市場規模が260億円になり、前年比216.7%の伸びを見せたという。この背景には、やはり震災による災害時の水への不安が影響しているのは間違いない。
49歳の加納康彦さん(仮名)のお宅では、2011年の夏にウォーターサーバーを導入したという。
「おいしい水とか安全な水については、以前から考えてはいました。そこで水道の蛇口に浄水器をつけたり、ポットに水を浄化する石のようなものを入れたりして工夫してきたんです。でもこれは、水道が通っていたら使えますが、止まってしまったら意味がないんです」
加納さんのお宅では震災の際に一時、水道が止まったという。理由は、上水道から家に引き込むためのパイプが外れたこと。
「家の外壁をつたっている部分だったので、幸い自分で直すことができました。もしこれが地中の配管だったらお手上げです。妻といろいろ話し合って、ウォーターサーバーを置いたらいいかもしれないと考えるようになったんです。実際、私の周囲でも震災が契機になってウォーターサーバーを導入した人が何人かいました」
道路や家屋がダメージを受けると水道管も破損することがある
加納さんは「プレミアムウォーター」を選び、リビングに置いた。使い勝手がいい場所というだけでなく、非常時に家族が集まりやすいという点を考慮した。リビングは広いので、予備の水ボトルをウォーターサーバーの脇に置くにも適しているとのこと。
「いざ大災害が起こったときに、どれだけ役立つかはわかりませんが、少なくともある程度の水が手元にあるというのは安心できると思います。ウォーターサーバーとは別に『非常用持ち出し袋』に、ペットボトル入りのミネラルウォーターも入れています」
◆子どもを守りたいから…
38歳の坂口晴美さん(仮名)は、震災の翌年にウォーターサーバーを設置した。
「ちょうどそのころ子どもが生まれたんです。子どもをいい水で育てたいという気持ちから、ウォーターサーバーを使っている知人に相談して『アクアクララ』を置くことにしました」
坂口さんの一番の動機はお子さんの健康のためだったが、いろいろなウォーターサーバーを見た中で「アクアクララ」にしたのは、もう一つ理由があった。
「交換用の水ボトルが丈夫そうに見えたんです。実際、手で触ってみるとガッチリしていて、簡単に割れたり裂けたりしそうにない感じがしました。これなら地震で倒れるとか落っこちるといった事態にも、ある程度耐えられるんじゃないかと考えました。私にとっては、ビニール袋みたいに柔らかい素材は心もとなく見えたんですね」
ウォーターサーバーの交換用ボトルには2つのタイプがある。1つは使ったらゴミとして捨てられる「ワンウェイ方式」、もう1つは空になったボトルをメーカーに引き取ってもらう「リターナブル方式」だ。一般的に、ワンウェイ方式のボトルはコンパクトに捨てられるように柔らかい素材でできているものが多く、リターナブル方式は繰り返しの使用に耐えられるよう、頑丈に作られていることが多い。
「子どもの体のことだけでなく、災害のときに子どもを守るために水をしっかり確保しておきたいと思っています。私が選んだ備えの1つが、このウォーターサーバーだったんです」
子どものために最低限の水は確保しておきたい
◆導入後に改めて気づき…
60歳の西川和代さん(仮名)は、震災の翌年にウォーターサーバーを導入した。
「ウォーターサーバーは『フレシャス』を使っているんですが、知人からすすめられたからで、震災を機にとか災害対策といった考えは、最初はまったくありませんでした」
西川さんは日常の飲料水としてやお茶をいれたりと、ごく普通の水としてウォーターサーバーと接してきた。そんなある日、離れて住んでいる娘さんが帰ってきた。
「娘にはウォーターサーバーの話はしていなかったので、ちょっと驚いたようでした。水がおいしいとか便利だとか話す中で、娘が『これは、いざ水が出なくなったときの予備として使える』と、言ったんです。私は先の震災のことを思い出し、ウォーターサーバーには確かにそんな付加価値もあるかもしれないと思いました」
それから西川さんは、水のボトルを家族の誰もがわかりやすい場所に保管するなど、災害に対する意識を新たにしたという。
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電気が止まった場合はウォーターサーバーも機能しなくなるが、ボトルの中の水を使うことは可能だ。災害、こと地震はいつ起こるかわからない。いざというときの備えに本当に有効なものは何なのか、この機会に改めて考えてみたい。