防災月間に改めて考えたい──新型コロナウイルスに対応した新しい災害対策とは?
毎年9月は、1923年9月1日に発生した関東大震災を教訓に定められた「防災月間」である。地震や台風、大火災など災害に対する意識を高めようという目的があるが、今年はさらに新型コロナウイルスによる感染症対策もあって避難のあり方にも変化が見られるようだ。そこで今回は、災害時に重要となる水の確保をテーマに防災ついて改めて考えてみたい。
◆災害時に欠かせない水
日本は火山が多いため、古くから地震に悩まされてきた。ときには火山の噴火も各地で起こる。それに加えて台風の通り道であるから、夏から秋にかけては例年、暴風雨にもさらされる。特に最近では、大型の台風が上陸することが多くなってきて、「激甚災害」「記録的短時間大雨情報」といった過去にはあまりなじみのなかった用語が一般化してきてもいる。
では、いざ災害が起こったらどうすべきか? なんといっても、真っ先に考えるべきことは身の安全の確保だ。地震なら崩落や落下物のリスクがある場所から逃げる、津波なら高い場所へ、豪雨なら川の近くへは行かないなど。そうして無事避難したら、次は生命の維持を考える必要がある。このときに大切なのは「水の確保」だろう。よく「非常時の持ち出し品」としてリュックサックなどに、ペットボトルの水を入れておくことが推奨されている。水は生きるために摂取しなければならない最低限のものであるが、飲用以外にも利用価値が高い。それは衛生に関することだ。
災害で、土砂や泥水によって清潔だった環境が破壊されることも少なくない。また、被災後も散乱した家財などの片付けが待っている。その際、手洗いは衛生管理の基本だから、水でしっかりと洗いたい。コロナ禍の影響で除菌用のアルコールを常備している家庭も多いと思うが、すみずみまできちんと汚れを落とすにはやはり水がいい。厚生労働省によると、石けんや洗剤に含まれる界面活性剤は、ウイルスがまとっている「膜」を壊すことで無毒にする働きがあるとのこと。水と石けんの組み合わせは、ウイルスによる感染症対策にもとても有効といえるのだ。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)では、新型コロナウイルスに関して9種類の界面活性剤が有効であることを確認している。ノロウイルスやO157など他のすべてのウイルスに対して有効とは限らないが、少なくともこの9種類の界面活性剤を含む石けんや洗剤を常備しておいて困ることはないだろう。
新型コロナウイルスに有効とされる界面活性剤(NITE発表資料をもとに作成)
さて、水道が無事ならばいいが断水を想定した場合、水を飲用と衛生用とどちらも使いたいとしたら、ある程度の量を備蓄しておく必要がある。ウォーターサーバーを普段利用しているなら、この水を流用することが可能だ。
◆非常時に有効なウォーターサーバーは…?
ウォーターサーバーに使われている水の容器は、小さいものでも7リットルくらいからで、大きなものになると12リットルといったサイズもある。この水がなくなったら次の容器に取り換えるわけだが、空になってから注文するのではなく、1~2本の予備をストックしておく家庭がほとんどだ。
この水パックが残っていれば、まとまった量の水を確保することができる。そのためにはやはり、底をつくギリギリで次の水をオーダーするのではなく、常に2本程度は備蓄しておきたい。水は先に届いたものから消費していく。これは「ローリングストック法」と呼ばれ、水だけでなく非常食のように期限のある物資に使われる備蓄法だ。
ウォーターサーバー用の交換ボトルやパックというと、専用のサーバー本体にセットしないとならないし、停電したら肝心の水が使えないじゃないか…と思う人もいるかもしれないが、実はサーバー本体や特別な機器がなくても水を出せるような構造のものもある。例えば「アクアセレクト」のボトルには口金があり、通常はサーバーに接続しないと水が出ない。しかし、この口金は簡単に外すことができる。すると径の大きな注ぎ口が現れ、傾ければ水を出せるようになるのだ。
また専用のアタッチメント(コック)を取り付けることで、ボトルからの直接の給水を可能にしているメーカーもある。「コスモウォーター」では、ボトルを斜め下に傾けた状態で保持するスタンドとコックのセットを用意。「サントリー南アルプス天然水サーバー」でも、水のパックに直接取り付けるコックを別売りしている。
ウォーターサーバーを使っていない人でも、まとまった量の水が欲しいというニーズに応えた製品もある。「富士の湧水」から発売されている「Jパック」がそれだ。段ボールに入った水パックにコックが付属しており、サーバー本体がなくても使用可能。冷水や温水といった機能は当然ないが、常温でおいしい水を飲みたい人や、ウォーターサーバーを導入する前のお試しとしてもアリだろう。
手洗い用の水確保も重要!
これまでなら災害時に備えて、「とりあえず飲み水が多少あればいいだろう」といった認識でよかったかもしれないが、新型コロナウイルスによる感染がまだまだ続いている現状を考えると、手洗い用の水のストックまで考えておきたい。それに加えて有効な界面活性剤入りの石けんや洗剤を備蓄しておけば、より万全を期した防災対策といってよいのではないだろうか。