ペットボトルやウォーターサーバー…おいしい水とエコロジーの関係
人間が生活していくうえで、ゴミの問題を忘れることはできない。特に食品や飲料は日々欠かすことのできないものなので、それに関する廃棄物をゼロにするのは非常に難しい。たとえば、ミネラルウォーターのような市販の水を買う場合、飲んだ後の容器をどう処理するかは当然ついて回る。そこで今回は、「水とゴミ」についての最近の動向を追ってみた。
◆完全ラベルレスペットボトルも登場!
私たちにとって身近なペットボトル入りドリンクにおいて、最近、ラベルが非常にシンプルなものが増えていることにお気づきの人はいるだろうか。一例を挙げると、アサヒ飲料の「アサヒ おいしい水」は、2018年から商品にラベルをつけない「ラベルレス商品」として展開されている。ラベルレス商品とは、通常だとボトルに貼りつけられている商品名や成分表記などのラベルをなくすることで、廃棄物の量を減らそうという取り組みのことだ。
水でもお茶でもジュースでも、ほとんどのペットボトル製品には薄いプラスチックやビニールのラベルが巻き付けてあり、そこに商標や製品名、原材料名、メーカーの連絡先などが書かれているが、アサヒ飲料では法定表示も含めそれを外装段ボールに記載して、個々のペットボトルにはラベルを貼らないことにした。 使っている素材を表す「リサイクルマーク」は、ボトルへは小さなシールを貼りつけ、キャップには記載した。
これによりゴミの削減と同時に、ユーザーが捨てるときにラベルをはがす手間もなくなったわけだが、この4月、2リットルボトルをリニューアル。シールの代わりに、ボトルに直接リサイクルマークを刻印することで、完全ラベルレス化を実現した。同社の試算ではラベルやシールをなくしただけで、年間7トンの樹脂が節約できるという。
プラスチックやPET樹脂のようなゴミは、捨て場所やリサイクルにかかるコストのほかに、細かく砕けた「マイクロプラスチック」が海や川に流れ込むことも問題視されている。ごく薄いラベルとはいえ、大量に集まれば環境への影響は少なからずあるだろう。
ラベルレス以外にも、ペットボトルが廃棄物になる問題解消のため、日本コカ・コーラの天然水「い・ろ・は・す」では、この春から「100%リサイクルペットボトル」をスタートした。これは使用済みペットボトルを回収し、新たなペットボトルへ生まれ変わらせる新技術「ボトルtoボトル」によるもの。ゴミの削減と同時に新たな資源を消費しなくて済む。
このように、プラスチックゴミ問題に対して、より有効な対策が各方面から打ち出されて来ているのが現状だ。
ペットボトルのラベルレス時代がくる?
◆ウォーターサーバーのゴミ対策
ウォーターサーバーの場合、交換用の水ボトルにコンビニやスーパーで売られているペットボトル製品のようなラベルが貼られていることは少ない。素材を表示するシールと、キャップ部分についている封かん用の透明プラスチック程度が一般的だ。
中でも、各家庭でボトルを廃棄する必要がないのが「リターナブル方式」といわれる、空になったボトルをメーカーに回収してもらうスタイル。回収されたボトルは、徹底的に洗浄・消毒されて再利用される。つまり、リサイクルではなくリユースということだ。多くの場合、新しい水ボトルを届けてもらうのと交換で、空ボトルを持って行ってもらう。ただ、回収されるまでその空のボトルを家にキープしておかなければならない。
一方、空になったボトルをペットボトルと同じように捨てることができる「ワンウェイ方式」は、回収の手間がかからずユーザーにとってもラクなので、近年、採用するメーカーが増えている。「日本宅配水&サーバー協会」の調べでは、新規参入のメーカーはほぼ、このワンウェイ方式とのこと。
ちなみに、リターナブル方式を採用している「アクアクララ」では、ゴミを出さないという環境への配慮について、しっかりしたポリシーを数字を使って解説している。それによると、「アクアクララ」の12リットル入りボトルをゴミとして出した場合、500ミリリットルのペットボトル24本分を捨てたことになるという。ゴミ箱に24本のペットボトルが捨てられている様を想像すれば、いかに大量のゴミかわかろうというもの。
さらに、原材料の消費も削減される。ペットボトルの原料となるのは石油。1本製造するにあたり、40~50グラムの石油が消費されている。ところがこれをリサイクルするとなると、製造時の4倍もの石油が必要だという。資源の有効利用というものの、リサイクルには意外とコストがかかってしまう。多くのユーザーを抱える「アクアクララ」では、特にその差が大きいらしく、2014年度のデータでは、ペットボトルをリサイクルした場合と比較して、リターナブル方式のほうが1万2000キロリットルの石油が節約できたとしている。
リサイクルの場合、思いのほかコストがかかることも
「マーキュロップ」も、同様にリターナブル方式。ゴミだけでなく、CO2(二酸化炭素)の排出も抑えられるのが利点という。同社はそうした環境への貢献が認められ、2011年にはエコマーク認定を取得している。エコマークは、環境省所管の財団法人である日本環境協会が、国際標準化機構の基準に照合して決めている。
ちなみにリターナブル方式のボトルは、回収してリユースするため非常に頑丈に作られている。「アクアクララ」も「マーキュロップ」も、多少のことでは割れたりしない、頼もしいボトルだ。
一方、ワンウェイ方式を採用しているメーカーも、できるだけゴミを少なくするために小さくたためる素材のボトルにするなどの改良は常に行っている。また、柔らかい素材の水のバッグを紙の段ボールでガードした「富士桜命水」のような方式もある。
人間が生きていくうえで欠かせない水。今後は水製品に関してもさらに、ラベルやシール、キャップなど、ゴミが少なくなるような進化型ボトルが開発されていくだろう。