世界の水事情<欧米編> ブラジルのウォーターサーバーは激安!?
前回(アジア編)は、水道水がそのまま飲めなかったり、トイレに紙を流せなかったり…と日本の常識とは異なるアジアの水事情をご紹介した。今回は引き続き、「世界各国の水事情」ということでブラジル、ハワイ、オーストラリア、ドイツの水事情をリサーチしてみた。
◆オーストラリア編──意外にペットボトルが高い!?
まずは南半球にあるオーストラリア。大自然に恵まれているイメージの国だが、水事情はどうなっているのだろうか? オーストラリアで音響会社に勤めている30代の日本人男性に話を聞いた。
「水道水は飲めるし、水に関してはキレイな方だと思うよ。水道代は2人暮らしで月にだいたい25~30ドル(約2000~2400円)。3か月に1回、支払っているよ。コンビニで売っている500mlぐらいのミネラルウォーターは3ドル(約236円)とかする。10年前は確か1ドル50セント(約118円)ぐらいだったけど、ここ数年で物価が上がったんだよね」
記者自身も2年前に、10年ぶりにオーストラリアを訪れた際、コンビニに売っている商品の値上がりに驚いた。確かに、500mlのミネラルウォーターが3ドル(約236円)、コーラは4ドル(約315円)もしたのでスーパーで安い水に奔走した覚えがある。
「ウォーターサーバーは会社で使っているよ。日本みたいに会社が設置してくれて管理するわけじゃなくて、139ドル(約11000円)のサーバーをオフィス用品専用のストアで買ってきて自分で設置した。12リットルのタンクの値段は10ドル(約790円)ぐらいで、それもオフィス用品専用のお店で買っているよ。自分たちで飲む分には水道水でもいいけど、さすがにお客さんには出せないからウォーターサーバーのお水を出している。オーストラリアはペットボトルの水の方が高いしね。あと美味しいコーヒーを出すカフェがたくさんあるから、コーヒーを飲むなら社内ではなく外で飲むよ」
オーストラリアではペットボトルドリンクが高いので、確かにウォーターサーバーを選んだ方が安く済むようだ。
「建物によるけど、オーストラリアはお湯を長く使えなくてシャワーは5分から10分以内で終わらせる家庭が多い。一般的にオーストラリアの給湯器はタンク式で、タンクに溜まってるお湯を使い切ると、シャワーの途中で水が出ちゃうんだ。ほかの人が使うお湯の配分も考えないといけないから、シャワーは長く浴びられない」
オーストラリアではシャワーは5分以内!?
オーストラリアは自然に恵まれているようで実は砂漠のエリアが多く、降水量も低いので毎年、水不足が問題になっている。ちなみに記者も留学生時代に住んでいたホームステイ先で、シャワーは5分以内で済ますというルールがあったが、アジア人宅にホームステイしていた友人はシャワーの時間は注意されなかったそう。生粋のオーストラリア人は、元来、電力や水を無駄に使わないという意識が強いようだ。
◆ハワイ編──ウォーターサーバー付き冷蔵庫も?
依然として日本人に人気が高い観光地、ハワイ。ハワイ産のミネラルウォーターは日本でも販売されているが、現地ではどのような水事情があるのだろうか? 昨年まで2年間ハワイに住んでいてホテルに勤務していた、30代日本人女性に話を聞いた。
「ハワイの水道水は飲めるけど、私はペットボトルのお水を買って飲んでいたよ。ハワイに住んでいた時、近所のスーパーのセールを狙って買ってた。あと、ハワイにも日本のドン・キホーテがあるから、ウェブで安くなっていないかチェックしたり。水道代は家賃に含まれていたから、いくらか分からないぁ」
実は、アパートの家賃に水道代が含まれるという国は少なくはない。記者が住んでいたオーストラリアのアパートも家賃に水道代が含まれていた。
「けっこうウォーターサーバーを使っている家も多かったけど、ウォーターサーバー付きの冷蔵庫がある家もあったよ。あとは、コストコとか大型スーパーでペットボトルを大量買いしている人も多かった」
アメリカでは冷蔵庫に水道管をつなげて、常に冷水や氷が作られるアイスディスペンンサー付きの冷蔵庫が多くの家庭で使われているという。とても便利そうだが、キッチンの壁に水道管を通す工事をしなければならない。
◆ドイツ編──レストランで出てくるのは炭酸水
欧州のドイツはどのような水事情があるのだろうか? ドイツに住み音楽関係の会社に勤めている30代の中国人男性に聞いた。
「ドイツでは水道水も飲めるし、トイレも紙を流せる。水道代は毎月支払う家賃の中に含まれているから分からないけど、定額よりも水道水を使うと追加分を請求されるようになっているよ。僕は一度も請求されたことはないけどね。店で売っているミネラルウォーターや炭酸水は220mlで60~80セント(約70~90円)くらいかな」
記者は自分の経験や海外に住む友人の話から、家賃に水道代が含まれるシステムがわりとポピュラーなのは知っていたが、定額よりオーバーしたら追加で支払わなければならないケースは初めて聞いた。ちなみにそのドイツの知人に定額の水道代がいくらなのか聞いてみたが、把握してないとのこと。
ちなみに、なぜ友人が炭酸水の金額も教えてくれたのか疑問だったが、調べてみるとドイツ人は普通のミネラルウォーターよりも炭酸水を好んで飲むという。ドイツのレストランで水を注文すると、「炭酸ありか、なしか」を聞かれるか、何も聞かれないと炭酸水が出てくるのが一般的らしい。ドイツへ旅行する際は、事前に水の注文の仕方を調べておいた方が良さそうだ。
◆ブラジル編──ウォーターサーバーのタンクは4リットルで500円
リオオリンピック、パラリンピックで盛り上がったブラジル。事前には治安問題などがニュースで盛んに取り上げられていたほか、競泳プールの水が一夜にして緑色になったのも記憶に新しい。では、現地の水は果たして安心して飲めるのだろうか? 今回はブラジルに住んでいる30代の日本人女性に話を聞いた。
「水道代は家賃に含まれているから金額は分からない。お腹を壊すほどっていうわけではないから、料理には水道水を使っているわよ。現地の人で水道水を飲んでいる人はいるけど、でもウォーターサーバーを使っている家の方が多いね。もちろん、我が家もウォーターサーバーを使っているよ。4リットルぐらいのタンクと配達代込みで500円なの。安いでしょ? 毎回、ペットボトルを捨てるのが面倒だし、家まで届けてもらえるからすごく便利なの」
ワンコインで4リットルの水が届くなら、ぜひ記者もそのサービスがほしい! ブラジルでは水道水は飲めるようだが、安さと便利さでウォーターサーバーが一般的に普及しているようだ。
「トイレに紙は流せないの。外出先も自宅のトイレも、どこでも流せない。フタがしっかり閉まるゴミ箱を選んで、2日に一度、捨てる。今はもう慣れちゃった」
ブラジルではトイレの紙はゴミ箱へ…
なんと、アジア編で紹介したインドネシアとは違い、自宅でもトイレの紙を流せないという。調べてみると、ブラジルではまだ下水管が細い地域が多く、トイレに紙を流さないのが基本のようだ。外出先のトイレで使用済みのトイレットペーパーをゴミ箱に捨てることにも抵抗はあるが、自宅でも使用済みの紙を処分しなければならない…というのは日本人にはハードルが高すぎる。現地のルールに合わせて住んでいる日本人の友人をリスペクトしたい。
* * *
以上、世界の水事情を紹介してきたが、日本がいかに水に関して恵まれているかが再確認できた。日本の常識とは違う、海外の水事情には驚かさるばかりだが、反対に「トイレにシャワーが付いている!」「家族で同じお風呂に入るの?」「街中に自動販売機が多くてどこでも飲料が買える!」など、もしかすると海外から見た日本の水事情も相当変わっているのかもしれない。
しかし、日本の市場において、より安心・安全な水を求める志向は年々高まるばかりだ。しかも近年の温暖化により、熱中症予防としての水分補給が常識になってきている。シャワー付きトイレの普及に続き、一般家庭でのウォーターサーバーのさらなる普及も確実だろう。日本はいまや、立派な水先進国になりつつあるようだ。