運転上手なら「渋滞は追い越し車線から始まる」は知ってて当然?ムダに車線変更しても絶対早く着けないメカニズム

運転上手なら「渋滞は追い越し車線から始まる」は知ってて当然?ムダに車線変更しても絶対早く着けないメカニズム

ドライブ中の渋滞は、なるべく避けたいもの。少しでも早く渋滞を抜けるために、ドライバーは様々な対策を取るはずです。中には、追い越し車線を走るという人も少なくないでしょう。

追い越し車線を走り続けるのは、通行帯違反という交通違反になるため、基本的には走行車線を走るのが大原則になりますが、渋滞時などやむを得ない場合には、追い越し車線の利用も認められています。

追い越し車線のほうが流れがよさそうに見えると、ドライバーの心理としてはつい車線変更をしたくなってしまうというのは理解できます。

しかし、こうしたドライバー心理は自分だけではなく他車も同じ。皆次々に追い越し車線へ車線変更してしまうと、多くの車が追い越し車線に集まり、車線が均等に使われないことで渋滞の発生を早めてしまうのです。

「追い越し車線から渋滞が始まる」のはどうして?

「追い越し車線から渋滞が始まる」のはどうして?

実際に追い越し車線から渋滞が発生するメカニズムを確認していきます。

走行車線をゆっくり走る車があります。走行車線では遅い車を避けるため追い越し車線へ車線変更が行われます。すると、追い越し車線に交通が集中し、車間距離の詰まった車群が形成されるのです。

この状況で、追い越し車線にいる車の1台がブレーキをかけると、後続する車に次々と伝播し、流れが停滞してしまいます。これが渋滞の発生原因です。

追い越し車線の流れが停滞すると、走行車線でも逃げ場が無くなり、車の流れが停滞していきます。こうして両車線で渋滞が発生してしまうのです。

このように、早く進もうとする追い越し車線への車線変更は、結果として車線内の車の数をオーバーフローさせ、渋滞を引き起こします。まず、渋滞を発生させないためには、必要以上に追い越し車線を走行せず、キープレフトを心掛ける必要があるのです。

最近はドライバーの間でも周知が進んだ

最近はドライバーの間でも周知が進んだ

しかし、「追い越し車線から渋滞が始まる」という事実は、最近広く知られるようになってきました。高速道路ではたびたび、渋滞予防のためのキープレフトを呼びかける看板などが設置され、実証実験の結果もWEB上で確認できるようになりました。

こうした事実を多くの人が知る前は、渋滞時は走行車線の方が早く進み、追い越し車線が遅いという状況だったのですが、事実が正しく知られるようになり、渋滞時に車線ごとに発生する進行状況の差は、年々小さくなっています。

高速道路の維持管理を行うネクスコに話を聞くと、「渋滞予防のキープレフトや、渋滞時に走行車線にいる方が早く進むという事実は、10年前と比較すると、多くのドライバーが認知していると思う」と話がありました。

結局、車線変更しても到着時間に大きな差はない

結局、車線変更しても到着時間に大きな差はない

ここまで紹介してきたのは、交通集中とブレーキによる渋滞での結果です。この場合は、追い越し車線よりも走行車線を走る方が、若干ではありますが、先着できる可能性が高いでしょう。10~20km程度の渋滞で、約2分程度到着時間に差が出ます。

ただし、渋滞原因が交通集中とブレーキ以外となると、少し状況が変わってきます。

例えば、SAやICの混雑が渋滞の原因となっている場合。この場合では、SA入り口やIC出口で混雑が発生しているため、走行車線の方が先に混み合い、走行車線の方が時間的には不利になります。

また、車線減少に伴う渋滞の場合には、減少する車線を走っていく方が、若干早く渋滞を抜けることができると言われています。

しかし、こちらでも有利な車線を走行しても変化するのは数分だけです。渋滞の発生原因や対策への周知が進んでいる現在では、車線ごとの到着時間の差は、ほとんどなくなったに等しくなっているのです。

以上をまとめると、多くの渋滞では、走行車線の方が若干有利といえるでしょう。一部例外がありますが、どの渋滞でも渋滞を抜けるまでの時間は数分程度しか変わりません。

こうした状況を踏まえると、渋滞時に追い越し車線を走行するのは得策とは言えません。渋滞発生の原因を作らないためにも、基本はキープレフトで走行し、追い越し車線を走行するのは必要な時だけと、多くのドライバーが肝に銘じておけば、嫌な渋滞が発生しにくくなります。

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Labo.編集部
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小学館 ポスト・セブン局が運営する総合比較メディア「Labo.(ラボ)」。独自の取材・切り口で編集したオリジナル記事に加え、専門家などの監修にもとづいたプロフェッショナルな記事をお届けします。